京都に日本一の居酒屋がある、と
このブログにも何度か書いてきた
その店「おもて」が今月いっぱいで
閉店することになった。
ビルの建て直しがその理由だけど、
大将の長谷川さん自身、77歳と高齢で、
もういいかなと思ったようだ。
よくない!!!
と声を大にして叫びたいところけど、
諸行無常は世の理。
駄々をこねても仕方がないので昨日、
大好きな日本酒「伯楽星」を持って行ってきた。
(田舎の酒屋をのぞいたら
たまたまあったのでびっくりした。
だいぶ研究熱心そうな店だったけど)
相方の虎キチKと豚児も同行した。
4歳の豚児はさすがに”初おもて”だが、
虎キチKはここの酒を飲みながら
料理を食べていたら
泣いてしまうというほどのファンだ。
のっけから震える料理の数々。
ウニと生湯葉。びびった。口に入れた瞬間目をつぶった。奇跡。
鯛の子とオクラ。一粒一粒が美味、そう感じるうまさ。
白子のホイル焼き。自家製ポン酢がまたなんちゅうか。
出たァ〜! 海老芋! カニ入りあんかけ! 魂が震える味。
能登のブリのカマ焼き。カリフワの極致と香ばしさのハーモニー。
コの字型カウンターにおでん、というこの空間がもう。
おでんの牛スジ、きんちゃく、豆腐。ここ以上のおでんを知らない。
出汁がぶわ〜とあふれる出汁巻き。飲み物ですか?
「もうおなかいっぱい」と腹を抑えて唸っていた豚児が、
この出汁巻きを一口食べた瞬間、
またバクバク!と飢えた狼に変身。
いやはや、やっぱりすごかった。
思えばここ「おもて」を知ったのは15年ほど前。
虎キチKと冬の京都を歩いていて凍え、
湯豆腐でも食べて温まりたいと
飛び込んだ店がおもてだったのだ。
で、おでんを食べたら「え、何これ?」と目が真ん丸に。
それ以来、京都に来るたびに、
というよりおもてで飲むために京都に来ていたようなもので、
結婚したときは大将がご馳走してくれたり、
大将自身のドラマのようなシーンにも立ち会ったり。
まわりの友人知人にも教え、
このブログにも書いた。
「本当にすごい店だった」
とたくさんの方から連絡をいただいた。
(今回の閉店についても多くの方から連絡が。
みなさんありがとうございます)
そのひとり、写真家の田中真衣さんも
すっかりおもてに魅了されたようで、
今回の閉店を聞いて東京から駆け付けたそう。
「撮った写真を額装したので石田さんから渡して」
とことづかったので、昨日ミッションを果たした。
至高の料理にくわえ、
コの字カウンターで口福を共にする客たちとの一体感、
そして大将、長谷川さんの恵比須顔。
この店の価値を考えたら、
ビルの建て直しなど国がストップをかけ、
保護し、世界文化遺産に登録する、
ぐらいのことをしてくれてもいいと思う。
でもここで飲んだ時間は、
きっと一人一人の心に生き続けるのでしょう。
長谷川さんのつくる料理同様、
お店の存在自体が奇跡で、
余韻がずっと続くから――
と月並みなことを思って寂しさをごまかしつつ、
最後の訪店を終えた、2023年のクリスマスでした。
長谷川さん、これまで本当にお疲れさまです。
そして最高の料理と時間をありがとうございました。
ずっと忘れません。
で、本当に「おもて杉並大会」やりましょうよ(笑)。