高校の寄せ書きノートが
置かれているという居酒屋に
高校の同級生3人で行ってきた。
(ほんとは4人で行く予定だったが、
ひとりが仕事で来られなくなった。
変わったな、マサヤン…)
自分の出身校のノートだけ閲覧したり、
書き込んだりできるというルールだ。
1987年に客からの提案で始めて以来、
ノートはどんどん増えつづけ、
今では3000校以上のノートがあるという。
全国には約5300の高校があるそうだから
半分以上の高校ノートがあるというわけだ。
店に入った瞬間、目をむいた。
店の壁という壁がノートで埋まっている。
さすがの3000冊である。
で、僕らの出身校である田辺高校ノートもしっかりあった。
1冊ずつ綺麗にファイルされている。
校舎や校歌や校章の写真まで。
ノート設置を依頼し、1ページ目を書き込むのは
その高校の卒業生だが、
ファイルに閉じたり写真を貼ったりして
仕上げるのは店の女将さんのようだ。
ご苦労さまです。
写真にも写っているとおり、
この田辺高校のノートは、
2010年の3月に誕生している。
「No.1286」という番号も見えるが、
これはつまり1286番目にできたノートということらしい。
そんなに早くないけど、そう遅くもないか。
この店にせえへんか?
と提案したのはヤッチンである。
ヤッチンはたまたまテレビで見て知ったらしい。
その番組では撮影中に、
同じ高校の卒業生がたまたま鉢合わせたそうだ。
ノートは各高校に1冊ずつしかないので、
鉢合わせた場合、譲り合って閲覧する必要が生じる。
その際、女将が双方の年齢を聞き、
後輩のほうが先輩のところへ行って挨拶する、
というのがルールだそうだ。
それもいいアイデアだなあと思うが、
番組の撮影中にそういう事態が発生したなんて…
「そりゃ仕込みやろー!」
当然、僕は笑いながらそう言ったのだが、
ほかの2人、ヤッチンやシオヂは
そんなことはないやろ、と否定するのだ。
そう考える石田は汚れている、と。
いやいや待ってくれ。
星の数ほどある東京の飲食店の1店に
同じ県の出身者ならまだしも、
同じ高校を卒業した者が
居合わせる確率はどれくらいやねん?
それが番組撮影中に起こるなんてありえるか?
などと言っていると、
女将さんが僕らのテーブルにやってきた。
「みなさん、和歌山の田辺高校ですよね?
別の卒業生の方が見えられました」
マ・ジ・す・か?
このとき3人のオッサンの頭の中には当然、
田辺高校出身のどんな美女が来店されたんだろう?
という考えが巡ったわけだが、
ご対面してみるとロマンスグレーのおじさんだった。
ただ、僕と同じ陸上部で、家は他の2人と近く、
ということで、共通の先生の話や地元の話題で
ひとしきり盛り上がった。
いや、こんなこともあるんですね。
人口が全国で40位という和歌山県の
それもとくに田舎のほうの学校なのに。
店を出るとき、女将さんは
「ほんと珍しいことですよ」
とニコニコおっしゃっていた。
ってことは、やっぱりテレビのは
アレですかね?
*
ちなみにお店の名前は
新橋駅徒歩3分。
料理もちゃんとしていて、いい店ですよ。
僕らも書き残してきました。