大ヒット映画『君の名は。』を観たのだが、
ひ、人によって、か、感じ方は、
や、やっぱ、ぜ、全然違うんだな、
と僕のなかの裸の大将が
ブツブツとつぶやいてしまった。
空前のヒットで、評価もすこぶる高い、
という前提がなく、まっさらな状態で観れば
どうだったのかな、とも思うが…
うーん、あまり関係ない気がする。
期待したぶん、アレ?と肩透かしを食らった、
というのはあるけれど、
少なくとも、ヒット作にケチをつけたくて
観たわけではまったくなかった。
作品の世界に没頭し、素直に感動しようと、
つまり普通の気持ちで観にいったのだ。
ところが…
はい、これより下、この映画に対して
いくらか批判的なことを書きます。
でも言うまでもなく、
思いっきり僕の主観です。好みです。
なのでこの作品が大好きな方、および、
これから観ようと思っている方は
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ネタバレありまくりです。
では。
*
何より感じたのは、
この映画には“行間”がないな、
ということ。
言葉にならない部分や、
絵にできない部分にこそ、
妙味や機微があり、
そこをどう描くで、
物語に奥行きが出ると思うのだけど、
この映画は全部見せている、
あるいは語っているから、
余韻がないな、と思った。
たとえばラストシーン。
ふたりがお互いに気づかずに、
あれ? と思う程度ですれ違ったほうが
いろんな解釈ができて、
人生の不思議さをしみじみと感じる
といったような余韻が広がったんじゃないかなと思う。
ひと目見た瞬間、わけもなくその人に惹かれる、
という経験は、おそらく誰にでもあるだろうから、
そのことと映画がつながって、
説得力が生まれ、物語がより広がり、
カタルシスが生まれたんじゃないだろうか。
でも実際の映画では、
互いに気づいて、
「君の名は!」なんて言い合うから、
あちゃあ、と恥ずかしくなるし、
急に茶番になってしまった。
それまでの壮大な物語が、
結局は主人公2人だけの内輪ネタに
収束してしまった感じがした。
だから共感もできず、メッセージも感じられず、
君たちよかったね、で終わってしまった。
僕にとっては。
また伏線を張り巡らせて、
それらを丁寧に回収していくのはいいのだけど、
それだけ、という感じがした。
辻褄は合うけど、それだけ。
パズルのようなおもしろさはあるけど、それだけ。
伏線は回収されるためだけに置かれているようで、
そこにドラマが感じられなかった。
ほかにも、人物があまりにも類型的、
そもそもプロットがありがち、
2人が互いを好きになる理由が見えない、
3年の時差になぜ気づかない?
飛騨高山への旅にあの2人、ついていくか?
等々、ツッコミどころが出てくるたびに、
作品世界から現実に引き戻され、
どうにも没頭できなかったのだが、
重箱隅つつきは本意じゃないので、このへんで。
(って、だいぶ言ってるけど…)
でもま、なんだかんだいっても、
最後まで興味深く観ることはできたし、
映像はきれいだし、
上白石萌音ちゃんの声や演技は素敵だし、
(『舞妓はレディ』以来のファン)
それなりに楽しめたんだけれど、
うーん…
な、なぜ、こ、こんなにヒットするのか、
よ、よくわからないんだな。