ある天才講談師を目当てに
最近ちょくちょく寄席に行っているのだが、
同じ高座に上がる落語家には
すごい!と思える人が
このところずっといなかった。
「落語ってもっとおもしろかったのに」
と毎回思ってしまった。
懸命にやっているみなさんには
申し訳ないけれども、正直な話、
上質の落語に飢えていた。
ふと一人の名を思い出した。
古今亭菊六さん。
7、8年前に一度聴いて衝撃を受け、
それからもう一度聴きにいって、
やっぱりうまいな、おもしろいな、と感心した。
そのあと僕自身が特別な理由もなく
寄席に足が向かなくなり、
そのまま菊六さんのことも忘れていた。
ちょっと調べると、
今は真打となり、
文菊と名を変え、
精力的に活動されている様子。
一昨日の黒門亭に日程が合ったので、
行ってみた。
初の黒門亭である。
じつにいい感じ。
しかも安い。
5人の落語家の噺を聴けて1000円だ。
トリはやっぱり文菊さん。
それまでの4人の噺も悪くはなかったが、
やはり文菊さんは抜けていた。
よかった。久しぶりに涙を流して笑った。
目の前に200年前の世界が現れ、
登場人物が入れ替わり立ち替わり躍動する。
磨かれた話芸というものの力、
言葉の魅力に改めて唸った。
うん。これから文菊さんも追いかけよう。
*
黒門亭を出たあとは
近くの名店「うさぎや」でどら焼きを買った。
神田連雀亭の近くのショパンもそうだけど、
落語を聞かせる小屋の近くには
味な店があって、いいなと思う。
噺を聴いたあとに食べる甘味は風情がある。
ところで阿佐ヶ谷にも同じく
「うさぎや」という名の
どら焼きの名店があるのだが、
姉妹店というわけではないようだ。
昔は関係があったとかなかったとか。
聞いた気がするが忘れた。
で、どっちの「うさぎや」がうまいかというと、
うーん、阿佐ヶ谷「うさぎや」かな、僕の好みは。
いつもの阿佐ヶ谷びいきではなくて。たぶん。