石田ゆうすけのエッセイ蔵

旅作家&エッセイスト、石田ゆうすけのブログです。


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ホームラン焼きの数奇な運命

新春スペシャルか何かで

『チコちゃんに叱られる』が朝から流れ、

朝飯を食べながら見ていたら、

えええっ⁉と叫びそうになった。てか、叫んだ。

 

タイ焼きの起源についての話だ。

明治末期に麻布の浪花家が考案したそうだ。

で、最初は今川焼きを改良して、

「亀焼き」を作ったらしい。でも売れない。

じゃあ、と「うさぎ焼き」を作った。これもダメ。

それでは、と当時子供たちが野球に夢中になっていたから

野球のボールの型で「ホームラン焼き」を作った。

それも売れず、今度は、と

「タイ焼き」を作ったら、見事に売れた。

そっか、亀もウサギも野球のボールも普通は食べるものじゃない、

だからタイ焼きは売れたんだ、というストーリーだったのだが、

なぜこの話に「えええっ⁉」と驚いたかというと、これだ。

7年前、北海道の根室を旅したとき、見つけた店である。

 

 

 

もちろん当時の僕は、タイ焼きの起源を知る由もなく、

このときは、ただただそのネーミングセンスに感心し、

写真を撮ったあと、中に入ってホームラン焼きを食べたのだ。

 

 

野球のボールにホームランと英語で書いてある。

味はまさに今川焼き。

 

なぜこのホームラン焼きが根室にあるのか?

『チコちゃん』を見ていてピンとくるものがあった。

番組では亀焼きとウサギ焼きの型を紹介していた。

明治末期につくられたその型がまだ残っていたのだ。

ところがこのホームラン焼きの型だけは映らなかった。

どんな型なのか、むしろ一番見てみたいのに。

ん?

てことはですよ、こう考えるのが妥当じゃないですかね。

 

ホームラン焼きの型をつくったけれど、さっぱり売れない。

ええい、こんなもの質に流してしまえ!と浪花家さん、

その型が流れに流れて、北海道の東の果ての果て、

本土最東端の町、根室にたどりついたのでは?

他の可能性を考えると、誰かがホームラン焼きをまねるか、

別の人が偶然同じものを思いつくかのどちらかだと思うけれど、

この”質流れ”説が可能性としては最も高いんじゃないですかね。

だって売れなかった商品をまねるバカは

そうそういないだろうし。

 

そう思って「ホームラン焼き」で検索すると、

やはり根室しか出てこないのだ。

しかも、僕の食べたのは英語で書かれていたが、

この店には日本語のホームラン焼きもあるみたいで、

ロゴを見ると、まあ、ずいぶん古そうなのである。

(って、店自体も写真のとおり古いんだけど)

 

 

こんなおもしろいネタが番組では紹介されていなかったから、

NHKほどの取材力をもってしても、

根室のホームラン焼きにはたどり着かなかったのか、

それとも番組の尺の問題で放送しなかったのか。

いや、でも明治につくられ、売れなかった商品の型が、

現在根室にあって、地元の名物お菓子として、

長く親しまれている、って話は、

チコちゃんならやりそうなものだけどなあ。

ま、まだ推測の域を出ないのだけど。

 

ついでに、このホームラン焼きの店がいい感じなので、

そのとき撮った他の写真もご紹介。

 

(外気と店内の温度差がすごくて、曇っちゃったけど)

いやはや昭和だなあ。

たしか50年以上やっているってそのとき言っていたから、

いまでは創業から60年ぐらいになるか。

 

「なんでホームラン焼きなんですか?」

とこのとき僕はたしか聞いたと思うのだが、

店の人も首をひねるばかりだった。

おそらく先代から使われている型だったので、

不思議にも思わず使い続けているのだろう。

ってことは、もし店の人があの『チコちゃん』を見ていたら、

「あああっ!」と叫んだことは想像に難くなく、

ていうか、根室の人みんな叫んだんじゃ…(笑)。

 

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