白神山地の旅で、あるラーメン屋に入ったら、
若い店員たちが全員頭にタオルを巻いていた。
ああ、なんか嫌な予感がするな、と思いつつ、
810円の比内地鶏ラーメンを頼むと、こんなのが出てきた。
見た目はうまそうだけど、糸唐辛子がやはり嫌な予感。
で、食べてみると、カクンと首を垂れた。
こんなにまずいラーメンは久しぶりだな、と思ったら、
そうだ、最近は『dancyu』ウェブの連載のおかげで、
”昔ながらの中華そば”ばかり食べているのだった。
なんだろう、この今風のすかしたラーメンのまずさは。
『dancyu』の記事にも書きまくっているけど、
だいたいスープが塩辛いんだよなあ。
それに香りとコクを出すために香油が大量に使われ、
ひと口目は派手でうまいんだけど、すぐに飽きる。
濃い味による”インパクト”ばかり
ねらっているのかなと思ってしまう。
なんでこんなまずいラーメンが810円もするんだ、
と釈然としない思いで店を出た。
その数日後、やっているのかどうかわからないような
年季の入った店が現れた。
そりゃっ、と入ってみると、
かなり高齢のお婆さんがひとりでやっている。
(あとで年齢を聞いたら83歳とのこと)。
800円の「ラーメン定食」というのを頼んだら、
こんなのが出てきて、のけぞった。
ラーメンとご飯に加え、地産のモズクにフキの煮物、
マグロの煮つけ、そしてタコの刺身!
これで上の比内地鶏ラーメン1杯とほぼ同じ値段とは。
おまけにラーメンを食べてみると、
比内地鶏ラーメンよりはるかにうまい。
しかもご飯はお代わり自由だという。
ついでにいえば、小鉢もタコ刺しもめちゃうまかった。
『dancyu』ウェブで昭和な店をまわるようになって、
ますます確信するようになったんだけど、
古い店はまず間違いがないんだよな。
何十年も続いてきた理由が、ちゃんとあるのだ。
比内地鶏ラーメンの店はあと何年続くだろう?