石田ゆうすけのエッセイ蔵

旅作家&エッセイスト、石田ゆうすけのブログです。


※親サイトの『7年半ぶっ通しチャリ世界一周』はパソコンを新しくしたためにストップしたままです。
近況報告や各種案内は、もうしばらく、当ブログにて行います。
作詞家の言葉選び
及川眠子(おいかわ・ねこ)さんは和歌山出身の作詞家。レコード大賞をとったWINKの『淋しい熱帯魚』や、エヴァンゲリオンの主題歌『残酷な天使のテーゼ』など、ヒットを飛ばし続ける売れっ子だ。
そんな眠子さんがたまたまぼくの本を読んでくれ、共通の友人である、やはり和歌山出身のエビノキ氏の仲介で会うことになった。3人で阿佐ヶ谷の世界一うまい焼鳥屋へ。

ハツやレバーをつまみながらいろんな話を聞かせてもらったのだが、言葉の選び方についての奥義を聞いたとき、心に響くものがあった。
眠子さんいわく、陰と陽、硬と軟を組み合わせるのだ、と。そうすることで言葉に広がりや奥行きが出るということらしい。
なるほど、「寂しい熱帯魚」しかり、「残酷な天使のテーゼ」しかり。
ちなみに『寂しい熱帯魚』はタイトルを見せただけでプロデューサーから一発OKをもらったそうな。

そうか、そうだよなあ、とビールをぐびぐびやりながらぼくは深くうなづいた。うーん、なんかめっちゃ腑に落ちる。けど、なんだっけ? 自分も同じ意識で言葉を選んだ記憶があるんやけど、これなんだっけ? うーん。思い出せん。うーん、と記憶の底をぐちゃぐちゃさらったあげく、20分後ぐらいにようやく思い出し、首が「カクン」となった。
『いちばん危険なトイレといちばんの星空』やん……。灯台もと暗し。アホか。


眠子さんとエビノキさんは地元の名所、熊野古道を盛り上げようとランドマークソングを作り、精力的にプロモーションしています。試聴もできますので、よかったら聴いてみてください! →こちら


| 生活 |
重版とサッカー
おかげさまで、文庫版『行かずに死ねるか!』の重版が決まりました。4刷目です。ご愛読いただいたみなさん、本当にありがとうございました!

今晩あたり、ひとりでお祝いしようかな、と思います。
ま、ひとっ風呂浴びたあと、ジャズバーで飲むぐらいですが。

話変わって、昨日の試合。
サッカーのパラグアイ戦。
うーん……。前半はまだよかったけど……。ま、テストの意味合いが強かったんだろうだけど……。うーん。
正直いって、バーレーンに負けた前の試合といい、昨日の試合といい(コートジボワール戦は見られなかった)、監督が代わってから、なんといいますか、部分的なところはともかく、全体的には眠くなるような試合ばかりの印象が……。うーん。

とりあえず、巻、ナイスクリア!(なんだあの逆方向ヘディングは!?)
高原、ナイスパス!(なんだあのトラップは!?)

昨日、ぼくがいちばん感動したのは寺田のインタビューですね。サッカー選手のほとんどが、判を押したように同じ言い回し、同じ言葉でインタビューにこたえるなか、32歳で代表に初招集された苦労人は言葉の使い方が巧みでした。そこが、昨日のサッカー中継でいちばん光ったところですね。はは。
(「初召集された苦労人」って言い回しも手垢がつきまくってるか……)



| 著書について |
おんれい。
新潟の講演にお集まりいただいたみなさん、ありがとうございました。
これまでに何度も書いていますが、自分のやったことは冒険でもなんでもなく、ぼく自身も立派な人間ではまったくないので、方々に走り回って講演をすすめてくださったスピークアップの渡辺さんやスタッフのみなさん、そして、会場に足を運んでくださったみなさんには、感謝とともに、申し訳ない気持ちがどうしても起こります。でも平伏ばかりしていてもしかたがないので、とりあえず、講演に関わったみなさんが楽しい思いになっていただけるよう、次も心をこめてやります!
(次回、アフリカ・アジア編は6月29日です)

しかし気持ちいい天気ですねえ。
今日は1日家で原稿執筆か、と思ったけど、あまりに気持ちいいので、外のオフィスに行って書いてきます。今晩は7時からサッカーのパラグアイ戦。いまから2時間半ぐらいしかないけど、このまま家にいたら喪失感に襲われそうだ!




| 生活 |
お知らせ
いまから新潟に行ってきます。
明日は新潟の新しい図書館で講演しますので、よろしければ。

5月25日(日)13:00〜15:00
「アメリカ・ヨーロッパ編」
※世界一周を2回にわけてやります。後編は6月29日。
会場:ほんぽーと 新潟市中央区図書館3F ビーンズホール
料金:1000円(高校生以下半額)
詳細はこちら
| 講演 |
腹のなかから出てきたもの
後援会の会長をやってくれている山本くんから1冊の本が渡された。
彼のおじいさん、宮本國蔵氏が書いた戦中体験記だ。
あとがきに「清く正しく、余生を終わりたい」とあり、おそらくそういった思いもあって、中国に派兵したときの体験を残そうとされたのだろう。その意思を、家族らが受け止め、みんなで協力して編集し、山本くんが働いている印刷・デザイン会社で製本して自費出版にこぎつけたという。

家に帰ってさっそく項を開いたが、読むのに多少骨が折れる。文章を書き馴れているわけじゃないらしい。しかしそこに書かれているのは、小説のような稀有な体験の数々だった。

著者は中国のある地方で、中国人の部下と一緒に炊事班として働く。著者が異動することになったとき、中国人部下のひとりが警察署長に紹介してほしいと願う。著者は彼の望みどおりのことをする。後日、その町を訪ねると、念願かなって警官になった彼とばったり再会する。彼は笑顔で著者に礼を言う。

また、日本の敗戦が伝えられたとき、著者たちは中国を引き上げることになったのだが、中国共産党軍から攻撃を受ける危険性があった。そこへ、ともに時を過ごした中国の保安隊長が、著者に言う。あなたを守り、無事に日本に送り届ける、と。著者が保安隊長の身を案ずると、「自分は同じ中国人だから大丈夫だ」と彼は答える。

そのあと、著者は無事生還したが、別の隊は攻撃を受けた。たくさんの同志が命を落とした。

著者は本の最後のほうにこう記している。
「憎しみあわない者たちが殺しあうのが戦争」だと。

ぼくは布団のなかでその本を読み終え、枕元の電気を消し、部屋の薄闇を少しのあいだ見つめていた。
それから夢を見た。
細かいシチュエーションは忘れたが、ナイフか何かで腹を切られ、痛みでぼくは動けなくなり、何かの壁にもたれていた。しばらくして救助隊が来た。救助隊はぼくの様子を見て沈痛な顔を浮かべた。そんなにひどいのか、とぼくは驚き、傷口を触ってみると、指先にぬるりとした感触が伝わった。腹が妙な具合に盛り上がっている。傷口から胃や腸の一部が飛び出ているらしい。慌ててそれらを体の中に押し入れようとするが、ぐにょぐにょしてなかなか戻らない。そこで目が覚めた。ぼくはおそるおそる腹を触った。腹は平らだった。心底ホッとし、朝の日が差す、何も変わっていない部屋をしばらく見ていた。



| 生活 |
ラピュタのお姉さん
ぼくの住んでいる東京・阿佐ヶ谷には「ラピュタ阿佐ヶ谷」という文化発信基地(?)がある。
宮崎駿監督の『天空の城ラピュタ』をイメージしたその奇抜な建物の中には映画館、芝居小屋、レストランが入っている。文化レベルが高いといわれる阿佐ヶ谷のシンボル的存在だ。

で、その映画館では毎日マニアックな映画を上映しているのだが、最近までやっていたのが、「日活ロマンポルノ名作選」。
70年代の名作・珍作24編を1ヶ月かけて上映していた。
そのトリを飾ったのが、『マル秘色情めす市場』。この映画については5月15日のブログにも書いたが、とにかくすごい。芸術作品としてカンヌあたりに出品しても、ほかの作品とまったく見劣りしないだろうし、それどころか下手をすれば大きな賞も取れるんじゃないかと思うほどの傑作だ。逆にいえば、ほとんどエロさを感じないので、公開当時、ピンクを求めていった人は怒ったんじゃないだろうか。

さて。
先日、アフリカ自転車チームのひとり、ジュンと飲んだとき、そのことを熱く語ったら、次の日、ジュンは仕事を早々に終わらせて、ラピュタ阿佐ヶ谷に向かった。そしたら、彼にはかなり意外だったようだが、満員で入れなかったらしい。うむ、恐るべし、めす市場(しかしすごいタイトルだ…)。

ジュンはあきらめきれずに、次の日の奥さんとの約束を反故にし、『めす市場』を見に行くことにした。そして受付の若いお姉さんに「明日、何時ごろ来れば入れますか?」と聞いた。
するとお姉さんは「30分前には来てもらったほうがいいですね」と言ったあと、やや心配そうな表情で、でもきわめてふつうに、こう付け加えたそうだ。
「めす市場は人気がありますからね」

ううむ。やはり阿佐ヶ谷の文化レベルは高いっ。通天閣のように高いっ。



| 生活 |
大仏とお知らせ
茨城県の牛久にある大仏は高さ120メートル。
世界一の大きさで、ギネスブックにも載っているそうです。
昨日はその大仏が青空に映えていました。

お墓参りのあと、キヨタくんと焼き鳥を食べ、ドライペニーズのジュンや隣人のMくんらとも合流。彼らいわく、「もっと汚い人だと思いました」。


ちょっと遅くなったけど、お知らせがひとつ。
現在出ているサントリーの『クォータリー』という雑誌(広報誌?)にぼくの記事が6ページ載っています。四国松山の老舗バーを訪れたときの様子を、サントリー角瓶の紹介を交えながら、旅行記タッチで書いています。その記事もぜひ読んでほしいのですが、表紙にもご注目! 倉本聰や伊集院静といったそうそうたる執筆陣のなかにぼくも名前を連ねています。
嬉しいけれど、恐縮……。

| 生活 |
20年前の過去と20年後の未来
愛しのあの人と20年ぶりの再会! 
というわけにはいかなかった。
ヒゲをきちんと切りそろえていったのだが、彼女の家を訪ねると、お母さんしかいなかった。
「20年前にお世話になった者です。自転車で日本一周してて……」と言うと、すぐにお母さんは「ああ!」と思い出してくれた。娘さんは結婚して埼玉にいるのだそうだ。子どもが3人いるらしい。
お母さんとしばらく立ち話をした。ふたりでよく笑った。別れ際、お母さんの台詞がよかった。
「またおいでよ、20年後に!」
それまでお元気で、とぼくは言って出発した。20年後、本当に訪ねる自分がリアルに想像できた。年を重ねるのも悪くないな、と思った。

そのあと、鹿島の古ぼけた木賃宿に泊まり、女将がひとりでやっている小さな居酒屋に飛び込みで入った。そこで地元のオッサンにからまれた。
「お前の人生、そんなんでいいの? それで満足してるの? ふざけんじゃないよ」

昨日、旅から帰ってきた。
その足で「ラピュタ阿佐ヶ谷」に映画を観にいった。
タイトルは『マル秘色情めす市場
1974年、日活作品。監督、田中登。
聞いていた通り、ポルノの範疇を越えた、とんでもない映画だった。舞台は大阪のドヤ街。自分の体ひとつでたくましく生きる女性、トメが主人公。無法地帯そのもののような30年前のドヤ街、道端に倒れている夥しい数の本物のホームレスたち、その中を歩く白いワンピース姿のトメ、精神障害を抱えた弟、その弟の性欲を、慈しみ深い表情で、手で処理してあげるトメ、やがてあるひとつのきっかけから自殺する弟。首をくくってぶらさがっている弟を見るトメ。あるとき、トメにその街を抜け出すチャンスがやってくるが、トメはその誘いの手を振り払い、笑顔で言う。この街で生きていくねん。

上映後、どの客も静かに、ゆっくり立ち上がった。若い女性の客もたくさんいた。

そのままジャズバー「吐夢」に行きたい気分だったが、出さなければならない原稿があったので部屋に帰った。
映画のなかの弟の表情や、彼を見るトメの視線を思い、ときどき熱い気持ちになりながら、夜中の3時まで仕事をした。

今日はやっと晴れた。冷たい雨の中を走っていた昨日までがウソのように。思い返せば、まったくひどいツーリング日和だった。
これからキヨタくんと会う。
ふたりでセイジさんの墓参りに行くのだ。
今日はセイジさんの10回目の命日である。



| 生活 |
茨城のあの人
いまから取材に行ってきます。
サイクルスポーツ誌の連載、『ぼくの細道』の取材。

じつはまだどこを走るか決めていません。東京駅に着いた気分で切符を買います。でもいまのところ最有力は茨城。日本一周時代、家に泊めてくれたお姉さんがいるからです。あ、といっても、家にはご両親もいたけど。
(書くまでもないけど、お姉さんとはもちろん何もありませんでした)。

もう音信不通になって何年もたつけど、いきなり行ってみようかな、と。ああ、こういうのってよくないかなあ。まあ、いいや。
では行ってきます。
| |
虫の好かん言葉
「生きざま」という言葉が嫌いだ。
と、酔拳の師匠がブログに書かれていた。
(おもしろいので、ご一読あれ→谷中庵日録4月28日

ぼくもまったく同感。
しかし師匠はさらに厳しく、「ぬくもり」も「出会い」もダメだという。
ああ、ぼくは自分の著作にそれらの語をけっこう使っている。言葉の嗜好は個人で違うだろうけど、でも安易にそれらの言葉を使っていたことは認めなければならない。もっと言葉にストイックにならなければ。

そんなぼくでも嫌いな言葉リストを作れば、けっこうな数になると思う。
「自分探し」
あ、ダメ。これはもう書いていて笑ってしまう。
あと、最近めちゃ気になるのが、
「気づき」
勝手に気づいてくれ。

あ、よくないね。ネガティブな話は。
では明るい話を。

先日、ゆみこさんとデートしてきた。六本木でシェークスピアの芝居を観て、そのあとはイタリアンディナー。笑い声の絶えない素敵な1日だった。

あ、ゆみこさんというのは笛吹き想くんのお母さんです。
ディナーのときは親戚の方たちも一緒で、みんなやっぱり最高に愉快な人たちでした。
想くんの叔母さんはミミズが好きだそうです。
| 生活 |
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