石田ゆうすけのエッセイ蔵

旅作家&エッセイスト、石田ゆうすけのブログです。


※親サイトの『7年半ぶっ通しチャリ世界一周』はパソコンを新しくしたためにストップしたままです。
近況報告や各種案内は、もうしばらく、当ブログにて行います。
われら青春!
今日のオフィスは某マクドナルドだ。
ふだんはあまりマクドを使わない。味がどうこうではなく(オフィス使用なので、味は関係ない)、ガキっぽいBGMが賑やかに流れていて、原稿を書く身には迷惑千万、というところが多いからだ。
しかし、今日、出張先でたまたま入ったこの店、じゃなかった、このオフィスは朝からジャズが静かに流れていた。店長、じゃなくて、管理人、あんたはえらい。

しばらく集中して書いていると、目の前に大学生風のガキンチョが6人座った。ぼくは目を三角につりあげ、彼らに一瞥をくれた。騒ぐなよ、お前ら。ここはオフィスやぞ。
彼らは神妙な顔で静かに座っている。
ぼくは再びパソコン画面に視線を移した。

「みんなに集まってもらったんはな、ちょっと大事な話をしたいねん」
ひとりのリーダー風の男が言った。
ぼくの片方の耳がピクッと動いた。いやいや、無視だ無視。原稿原稿。

「この前、みんなで海に行こうってなったのに、あいつが行かんから俺も行かへんとかさ、急にキャンセルしたりとかさ。最近さ、みんなで遊びにいくことなくなってきたやん。そういうの友だちやってる意味ないやん」
両方の耳がピクピク動く。いかん、原稿や原稿。しかし朝のマクドで何を話しとんねん。

「俺ら、小さい学校でクラスひとつしかなかったやろ。だからさ、俺ら特別やん。俺はお前らとずっとつきあっていきたいし、だからさ、包み隠さずぜんぶ打ち明けようや。みんなお互いなんかしら言いたいことあるやろ」

どうやら、田舎の幼馴染同士らしい。大学進学などで都会に出てきたのだろう。言葉の感じから関西のほうだと思うが、「だからさ」とか、妙に関東が混じっている。って、俺めっちゃ聞いとるやん。アホか。原稿や。

別の男が言った。
「俺はみんなに不平とかないよ。何か意見違うことがあっても、それはそれで言い分があるわけやし、俺はふつうに受け入れてるわ」

「なるほどな、たしかにそういうの大事やよ。でもな、ある意味で、それはコウジの悪いとこやで。本気でぶつかろうとせんと、いつもその場を笑ってごまかそうとするやろ」

「……そうやな。たしかに、俺には、そういわれてもしょうがない部分はあるわ」

また別の男が言った。
「うん、俺もじつはときどきそう思ってた。でもな、コウジみたいなキャラが俺らには必要やで」

ぼくはキーボードをバシバシ叩いた。パソコン画面には、いつの間にか原稿ではなく、彼らの台詞が打ち込まれている。わ。何をしてんねん、俺は。

リーダーが再び語った。
「それはわかってる。でもそうじゃないねん。俺はたしかにうっとうしい思われてる思うよ。でもな、本当に友だち続けていくんやったら、腹のなか、全部見せ合わんとあかんと思うわ。遠慮したらあかん。みんなこっち来て忙しくなって、なかなかこんな風に会えんやん。だからいい機会やろ。じゃあ、俺から言うけど、おいヒロ、お前今日も遅刻したけどな、親しき仲にも礼儀ありちゃうか。仲いいから遅れてもいいというのはよくないで」

そう。ほんとにそう。君の言うとおり。ぼくも気をつけます。

こうして、結局、1時間近く仕事ができなかった。

彼らの姿を、すごいなー、熱いなー、と冷めた目で見ている自分がいた。
でも、中村雅俊の青春ドラマが好きだった自分は、彼らの関係をどこかうらやましくも感じていた。ぶん殴り合って抱き合って泣き合う、ひと昔前の熱い友情、いいやんいいやん、めっちゃいいやん。

しかし、やはり時代なのだ。
そういう熱い話をしているにもかかわらず、たびたび携帯電話が鳴り、話の途中で誰かが席を離れるのである。
そのたびに気勢をそがれるリーダーの表情が、少し切なかった。負けるなリーダー。




| 生活 |
祈りの力
形而上的なものに関心はあるけれど、「スピリチュアル」といわれると「ケッ」と鼻をほじりたくなる。

「気づき」とか、「みんなつながっていこうよ」とか「love & peace」とか、そういうことを口にされると、ケツがむずかゆくなって屁をしたくなる。

そんな自分だけど、祈りの力は信じたい。

ラリー・ドッシーというアメリカ人が、その著書『祈る心は、治る力』(日本教文社)で「祈り」について書いている。
アメリカでは祈りの効果を示す症例はいくつもあるらしい。
たとえば、ランドルフ・バードという心臓病の専門医がこんな実験をやっている。サンフランシスコ総合病院にいる心臓病集中病棟の患者393名の協力を得て、一方のグループには米国内のさまざまな場所から祈りを送り、もう一方のグループには祈りをおこなわず、そしてすべての患者に同じハイテクな医学的治療を施した。その結果、祈られたほうの患者は、いくつかの測定の結果、統計学的にみて明らかによくなっており、祈りにはたしかな効果があること、そして祈りに距離は関係ない、という結論にいたった、ということである。
そのほか、祈りによって、イーストの成長率や、とうもろこしの実りかたにも、明らかな差があったことを紹介している。

この本には細かなデータは載っていないし、データの信憑性について問われると、ぼくは何も答えられない。
ただし、このことは付け加えておきたい。著者のラリー・ドッシーは医学博士で、内科医としてダラス市立病院の医長もつとめたことのある人物だ。


エミちゃんから「不安です」というメールが来た。
みなさん、よかったら、ガンと闘っているエミちゃんに祈りを届けてください。モンベル社がエミちゃんを支援するページを立ち上げています。そこに彼女の写真ものっています→こちら。彼女を思いながら、「最善のことが起こりますように」と祈ってみてください(あらゆる実験結果から、こう祈るのが最適だとのこと)。朝コーヒーを飲んでいるとき、仕事の合間にタバコを吹かしているとき、トイレでぼんやりしているとき、寝る前に歯磨きしているとき、いつでもいいから、彼女に祈りを届けてください。

彼女の近況についてはこちら

| 生活 |
ねぶた祭りで会ったみなさん
現在発売中の『b*p』(ビーピー)という雑誌にねぶた祭りの記事を書いています。
P108〜P109。
徹夜で書いたのでおかしなテンションになっていますが、よろしければ読んでみてください。
で、去年、インタビューにご協力いただいたみなさま。掲載誌を1冊ずつお送りします。住所を教えていただければ、と。
宛先は
yusukeishida@hotmail.com
です。
| お仕事 |
エミちゃん、まだ旅は残ってるぞ。
当ブログでも何度か紹介したシール・エミコさん。
ガンを乗り越え、中断していた自転車世界一周を再開させた、ものすごい女性です。笑顔が素敵で、おもしろくて、とても優しい女性です。
これまで、残りの旅を4回に分け、体調と相談しながら、3か月ずつ走ってきました。
その旅もあと1回、タイ〜日本のルートを残すのみ、となっていました。
医者からも「病を完全に克服した」、とお墨付きをもらっていたのに……。

ガンが再発しました。
なんでこんなひどいことをするんだろう。
憤りが頭から消えません。
ほんとに、なんで。。

アウトドアメーカーのモンベルが「シール・エミコ支援基金」を設立しました。
これまでに彼女の活動に触れ、元気をもらったことがあるみなさま。もしよろしければ、こちらのページをご覧ください。
応援メールも力になるかもしれません。
「シール・エミコ支援基金」


| 生活 |
追記
あと、遠方から来てくださったみなさんにも、もう一度お礼申し上げます。
ありがとうございました。
北海道から来てくださったTさん、ろくに話もできずにすみませんでした。講演前は頭の中がパンパンに膨れ、講演後は頭が真っ白になってしまい、細かいところに気が回らなくなります。いつも以上に……。
お友だちまで呼んでくださって、本当にありがとうございました。
| - |
いちばんおもしろかったもの
新潟から帰ってきました。
2日ともたくさんのお客さんに来ていただき、正直ホッとしました。みなさん、本当にありがとうございました。
渡辺さん、長期にわたって本当にご苦労様でした。そして今回も渋谷さん、多佳子さん、大三くん、図書館の真島さん、藤木さん、みなさん、本当にありがとうございました。

また、藤田さん、対談とても楽しかったです。重ね重ね御礼申し上げます。
しかし藤田ファンクラブのみなさん、すごいパワーですね(笑)。

懇親会もいい気分で酔えました。
そのなかでのお笑いを一席。

ビールのピッチャーを持ってひとりひとりにお礼を言ってまわるぼく。
そこにひとりの素敵な女性が。
女性 「図書館での講演、3回とも来ましたあ!」
ぼく 「ありがとうございます! どの回がいちばんおもしろかったですか?」
女性 「対談です!」 
ゴツ(テーブルに頭を打ちつける音) 

その対談の相手、藤田さんのブログはこちら
対談のなかで、氏のやさしさの底にあるものを少し見せてもらいました。
いろいろ考えさせられました。





| 講演 |
絵のエネルギー
友人に勧められて国立新美術館へ。
エミリー・ウングワレー展を観にいった。
とんでもなかった。

エミリーはオーストラリアの先住民、アボリジニの女性だ。
儀礼用のボディペインティングなどを描いていたが、78歳で初めてカンヴァスに絵を描き始め、それから亡くなるまでの8年間になんと3000点以上もの作品を残したという。

会場に1歩足を踏み入れた瞬間、ザッと鳥肌がたった。それから、出口にいたるまでの1時間半、ぞくぞくしっぱなしだった。
点や線で表されるその世界は、大地にも、霧にも、花畑にも、宇宙にも見え、会場を歩きながら、彼女の体内をさまよっているような気分だった。
かつて、これほどのエネルギーを、絵から感じたことがあっただろうか、と思った。深い感銘を受ける絵ならたくさんあったけれど。ちょっと前に行ったモディリアーニとか。

エミリーは自分の故郷が永遠のテーマだった。
そのため「私の故郷」というタイトルの絵が複数ある。
そのひとつが目に入った瞬間、体が何かに打たれたようになって、立ち尽くした。あ、やべ、と思って、顔を上に向けた。涙が出てきた。
「私の故郷」という名がついたその絵は、体が土に埋められていくような温かさがあった。


上の文、書きなぐりなので、粗いですが、とりあえず、お薦め、っちゅうことですわ。
エミリー展は今月28日までなのでお急ぎを!

さて、明日は新潟で講演です!
現在、写真をスキャニング中です!
阪神戦の一球速報見ながら!
あ、こら! 安藤!


追記

隣人のMくんにエミリー展を薦めたら、すでに観にいったとのこと。
彼も絶賛していましたが、ただ、観ていると、だんだん疲れてきた、とも。
そう、彼女の絵はエネルギーがすごいから、まともに対峙すると疲れます。

そこでお薦めの鑑賞方法を。
まず、絵を1枚1枚じっくり観ようとせず、全体像を把握するところから始めます。
絵に囲まれた部屋全体に漂う空気を吸いながら、流れるように歩いていく。
そうすると、部屋が変わるたびにやってくる新鮮な驚き、あれが、もっと高まります。
で、ひととおりザッと見てから、もう一度入り口のほうに戻り、自分の心に留まった絵だけを、じっくり眺めていく。
こうすると肩も凝らないし、絵をより楽しめるような気がします。
ぼくは美術展に行くといつもこういう観方をしますが、エミリーの絵はとくにそう味わうのがいいんじゃないかな。
センエツながら、ご参考までに。



| 生活 |
さよなら、ありがとう。
野茂がアメリカに行った年は、ぼくがちょうど世界一周に飛び出した年で、アラスカをスタートし、カナダ経由でアメリカを走っていたころだった。
そのうち行く先々で「NOMO」の名前を、現地の人から聞かされるようになった。
とても誇らしかった。
どちらかというと、というか、かなり自虐志向のある自分は、ソニーやトヨタやセイコーの話で日本を持ち上げられてもまったく嬉しいとは思わなかったが、赤い顔のでかい白人が野茂を賞賛するときだけは体の奥が火照るのを感じた。

昨日、ニュースで引退を知り、呆然としていると、大学の後輩のHから早速メールが入った。
Hは「日本で引退よりよかったです」と書いていた。ぼくもまったく同じことを考えていた。

この機に、ウィキペディアで野茂のことを調べてみた。
「マスコミに対する態度やインタビュー、鈴木監督との確執、メジャーリーグ移籍騒動というイメージから無口で無愛想に見られがちだが、実は明るくよく喋る性格である」
という一文が心に留まった。

「引退する時に悔いのない野球人生だったという人もいるが、僕の場合は悔いが残る。自分の中ではまだまだやりたい気持ちが強いが、自分の気持ちだけで中途半端にしていても周りに迷惑をかけるだけだと思った」

野茂の引退のコメントである。
妙にカッコつけた演出で引退する選手が散見される昨今、野茂のこの言葉は、正真正銘、生きている感じがした。



| スポーツ |
食べものの話をやります
「アスパラを食べると小便が臭くなる」という話の前に、お知らせです。
前にもお伝えしましたが、7月20日(日)、21日(祝)に新潟で講演します。
それぞれ13:00から。
テーマは「世界の食べもの」。
スライドを交えながら、食べものにまつわるいろんなエピソードをお話します。
両日とも同じ内容です。
といっても、いつもアドリブで話すので、スライドは同じでも言っていることはそのときどきでずいぶん違いますが……。
また、講演のあとは、新潟在住のエッセイスト、藤田市男さんとの対談もあります。
詳細、お問い合わせ、お申し込みはこちら
このHPのトップページにある「ワンポイントレッスン」という名の渡辺さんの日記、相変わらず最高です。7月16日付けの「マサキさん」というやつ、読んでみて下さい。

アスパラと小便については、また次回。


| 講演 |
アフリカの熱帯夜
長野から帰ってきた。東京の熱帯夜の中に。
ぐったりした気分で、蒸し風呂のような部屋に布団を敷き、横になったら、アフリカの夜を思い出した。

ブルキナファソという西アフリカの一国でのことだ。
その夜の暑さは尋常ではなく、宿で扇風機をまわしてもオーブントースターの中で熱をかきまわしているような状態だった。「無理」と思った。このままだと部屋で熱中症になる。

ぼくは汗だくの体を持ち上げ、ふらふらと宿の外に出た。すると、道路沿いに無数の死体が転がっていた。――と見まがうぐらいに、路上に大勢の人々が横たわっていた。彼ら現地の人間にもその夜の暑さは耐えがたいものだったらしく、みんな自分の家の前に出て、道路で寝ていたのである。
かなり異様な図だった。しかしその光景は、この世が我が家、という感じがして、ちょっと笑えた。

ぼくも彼らと一緒に路上で寝た。なんか、楽しかった。


ああ、今度こそ「アスパラを食べると小便が臭くなる」話を書こうと思ったのに、また別のことを書いている……。
明日こそは。大切な話なのだ。



| 生活 |
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