石田ゆうすけのエッセイ蔵

旅作家&エッセイスト、石田ゆうすけのブログです。


※親サイトの『7年半ぶっ通しチャリ世界一周』はパソコンを新しくしたためにストップしたままです。
近況報告や各種案内は、もうしばらく、当ブログにて行います。
あまりに巨大なヒジキ
ヒジキの煮物が好きで、いつも大量に作る。
これを冷蔵庫で保存し、食事のたびに少量ずつ小鉢に入れて出す。その横に主菜と味噌汁を置けば、一汁二菜の幸せ食卓がいっちょあがり、である。

ところで、先日、講演で秋田に3日いたのだが、そこでたくさんのごちそうをいただいた。
(Kさん、ありがとうございました)

分不相応なものをたっぷり味わったおかげで、ぼくの舌はぶよぶよとだらしなく肥えてしまった。それを引き締めるためには清貧な味が必要だ。ぼくは秋田から帰ったその日にヒジキの煮物を鍋いっぱい作った。

で、この料理は当然、冷まして食べるほうがうまい。
しかしこのヒジキが完成した時点で、晩飯予定の午後8時まであと30分という状況だった。これだけ大量のヒジキが30分で冷めるはずがない。どうすればいいだろう。
そのとき、

「ビカッ!」

と、脳天に稲妻が落ち、目の覚めるようなアイデアが降りてきた。
ぼくはヒジキを小鉢にとり、窓から外に出ている小さなベランダ(というか手すり)に置いた。するとヒジキから白い湯気が上がり、それが夜風にゆらゆらとなびき始めた。ふふ。これなら30分で冷めるはずだ。俺すっげ頭いい。

さて、主菜の「鶏のチリソース炒め」を玄関先キッチンでつくり、ご飯を盛り、味噌汁を椀に入れ、ワクワクしながら食卓へ。窓をガラリと開けて、暗闇に手を伸ばし、ヒジキの小鉢をとりあげた。ヒジキはうまそうに黒光りしている。

「…………?」

ヒジキにしては、光りすぎだ。
気のせいか色も変である。黒いのは黒いのだが、かすかに茶色がかっているように見える。
それより、絶対におかしいと思うのは、その形である。ヒジキというのは、ふつうは縮れ毛のように細いもの。
なのに、なぜ、俺の目の前にある小鉢のヒジキはこんなに大きくふくらんでいるんだろうう? 幅が3センチぐらいあるじゃないか。

「…………」

それは、ここ数年に見た中では最も大きいと思われる、生きたゴキブリだった。

言っておくが、ぼくの部屋は、散らかっているが、まあまあ清潔である。それにゴキブリ退治では最高峰と思える高級「コンバット」を置いている。話はそれるが、これの効き目は本当にすごい。置いてからは2年ほどはまったく彼らを見なくなった。
しかし、去年はとうとう2度ほど小さなやつが現れた。そして4年目の今年は、1か月に1度ぐらいだが、ちょくちょく、やはり小さなやつを見かけるようになった。彼らもしだいに抵抗力をつけてきているようだ。
そこで、コンバットに加え、アースから出ているコンクとかいうホウ酸団子を置いてみた。すると再び、彼らは姿を消した。『眼下の敵』なみの頭脳戦である。

話を戻そう。
とにかく、ぼくの部屋でごくごくたまに彼らが出たとしても、豆粒のような小さなやつばかりで、大きいやつはここ数年、一度も見たことがなかったのだ。つまり、小鉢のヒジキの上にのっかっている巨大なやつは、ぼくの部屋にいたやつではなく、窓の外に置いたヒジキの芳香に誘われ、外からやってきたやつ、ということにほぼ間違いなさそうである。
いやあ、わかってよかったよかった。
って、ちっともよくない。

……以上の思索を、ぼくは瞬時に行ない、目にもとまらぬ早業で小鉢に思いっきり息を吹きかけた。巨大ゴキブリは小鉢の中からブハッと吹き上がり、窓の外に向かって落下していった。と思ったら、窓枠にしがみついた。まるで『エイリアン』のラストシーンで、宇宙船の排出口にしがみつくエイリアンのようだった。ピーパーピーパー、チャーチャン、チャーチャン、チャーチャン、とサイレン音とあのサントラが流れ出し、ぼくはひとりで戦うシガニーウィーバーのような気分で新聞をとりあげ、「落ちろ、落ちろ!」と相手を払った。彼はたまりかねてついに落下し、羽を開く間がなかったのか、1階の窓の屋根に「ドン」と衝突。その音の凄まじさから、敵の大きさをあらためて知り、同時に平和がやってきたことをしみじみと実感したのである。終わり。

いや、まだ終わっていない。
ぼくは小鉢のなかのヒジキを見つめた。
さっきまでエイリアンが這い回っていた、ヒジキだ。
これを食うか、食わざるか……。

おそるおそる、黒いヒジキに箸をつける。
「ドビュッ」
ヒジキが爆発したように飛び散り、その中から、2匹目のやつがシャーッと牙をむき出して、ぼくの顔に飛びかかってきた。

つづく。

(※最後の段落だけフィクションです)




| グルメ |
トークライブのお知らせ
これから講演で秋田に行ってきます。
その前にお知らせを。

先般よりご案内しておりました、大阪梅田でのスライド&トークショー、詳細が決まりました。
お送りするのは「アフリカ編」。
ゲストはアフリカの親指ピアノ、「カリンバ」の奏者、サカキマンゴーさん。なんだかすごい人みたいです。

■開催日
10月25日(土)
OPEN  19:00
START 19:30
(途中、休憩やサカキさんの演奏をはさみ、22:00終了予定。でも延びる可能性も……)

■会場
『HEAVEN’S DOOR』
大阪市神山町8-18
「RAIN DOGS」というバーの3階です。行きかたはこちら)

■料金
¥2000(別途1ドリンク ¥600)
☆要予約。限定50人

■予約
『RAIN DOGS』
TEL:06-6311-1007
e-mail: raindogsmail@ybb.ne.jp

■主催
『Sound Bar 吟遊詩人』
e-mail: soundbar@taupe.plala.or.jp





| 講演 |
世にも珍しい、犬
昨日は素性の知れない変態どもと飲んだあと、メンバーのひとり、リーくんがウチに泊まった。
で、最近、酔うと物忘れに拍車がかかるぼくはそのことを忘れてしまった。で、今朝、ぼくの目の前にリーくんの寝顔が見えた瞬間「わっ!」と叫んでしまった。

ま、そのことはどうでもいいのだが、今日は世にも珍しい写真をみなさんにお見せしたいと思う。提供はリーくんだ。

リーくんは先週、台湾をひとりでほっつき歩いてきた。
そこでペットショップのオヤジから英語で呼び止められたらしい。
「お兄さん、どこから来たんだい? ほう、日本。こりゃまた。ところで犬はいらんかい? 世にも珍しい犬なんだ。パンダ犬だ。世界に2匹しかいないんだ」

旅行者の俺に犬を売ろうとするなんてどういう神経だよ、とリーくんは心のうちでツッコミながら、「いらないよ」と断った。
でもそのパンダ犬を一目見ようと、犬たちの鳴き声をたどって、店の裏手に行き、オリをひとつひとつ見てまわった。そして、その犬が目に入った瞬間、大爆笑してしまった。

「たしかにパンダっぽかったけどね、でもどう見ても、たんに毛を脱色してるだけなんだよ。で、その脱色も中途半端だから、ところどころ毛が茶色いんだ」

ぼくは二日酔いの頭でその話を聞きながら、まあ、そういうしょうもないことをするペットショップもあるだろうな、とぼんやり思った。で、なんの気なしに「写真はないの?」とリーくんに聞いたら、見せてくれた。
それがこれ。↓
















ぱんだ


朝から腹を抱えて笑ってしまったのだが、しかし、この写真、せつないですね……。



| 生活 |
サンマの恋人
取材で越前、加賀と旅してきた。
その模様はまたサイクルスポーツ誌で。今日は帰ってきてからの話を。

4日ぶりにわが愛しき部屋に帰ってくると、宅配の不在通知が届いていた。徳島の知人Kさんからだ。さっそく宅配会社に電話し、届けてもらうと、荷物の中身は徳島名物のスダチとサツマイモの鳴門金時だった。

Kさんは当ブログを読んで、ぼくがサンマにはまったことを知り、今が旬のスダチを送ってくれた、というわけだ。

感謝、多謝、深謝。
あのサンマの話を書いたあと、ぼくはサンマ中毒のようなものにかかり、四六時中サンマのことを考え、毎晩サンマを食べた。きれいに焼くために赤外線で焼ける高級網も買ってしまった(焼くのは玄関先だが)。
恋の初期症状にも似たその熱も、最近ようやく落ち着いてきた。しかしこのスダチでまた再燃しそうである。

ところで、インターネットなんてものは一瞬で地球上から消えればいい(携帯電話と一緒に)、と思っている自分なのだが、「ブログを読みました」とスダチを送っていただけたりなんかすると、ネット社会もいいものだ、と思ってしまう。ブログもいいものだ、と思う。

余談だが、ぼくはサンマも好きだが、ウニというやつもけっこう好きだ。
とくにミョウバンではなく塩水につけたやつ。
礼文島産もいいが、積丹産のウニが素晴らしいと思う。

あ、でもこれからはイクラか。
ズワイガニも好きだ。


そうそう。
大阪トークライブの日付、間違っていました。
10月25日(土)の夜、です。





| 生活 |
お知らせ。
いまから取材旅行に行ってきます!
で、ちょっと留守にする前に、お知らせを。

ひとつ。大阪でスライドショー&トークします。
10月24日(土)の夜、梅田のライブハウスにて。
詳細はまた後日、ご報告します。

もうひとつ。小学館のアウトドア雑誌『ビーパル』のぼくの連載、『リアル旅人図鑑』、先月はお休みでした。今月はのってます。デザインもちょっと変わりました。
で、今月の旅人は、かなり傑作です。写真だけでもウケると思いますので、よかったらご覧ください。
先月、休載の告知を忘れていたので、遅ればせながら……。




| お仕事 |
日蝕の同窓会
ツヨシがロシアに行った。
ツヨシというのは、近所に住む変態チャリ詩人ツヨシのことで、拙著『いちばん危険なトイレといちばんの星空』にも登場している。世界一うまいデザート「チェー」を食べて若ノ鵬なみにキマッたときに一緒にいた男だ。美形なのだが変態だ。

さて、なぜ彼がロシアに行ったかというと、皆既日蝕を見るためらしい。知人から誘われたのだとか。
「ま、どうなることやらね」と彼は冷たい目で、出発前は話していた。

で、ロシアから帰ってきたあと、彼のネズミランニングアパートに行ったら、部屋に『天文ガイド』といった雑誌が積まれ、地図を眺めているではないか。

「いやあ、素晴らしいよ」
彼は若ノ鵬なみにぼんやりした目で言った。
「瞬間なんだ。その瞬間、そこでしか見れない、宇宙の奇跡が、激しく幻想的で、そこにいるみんなが奇跡を共有しあって。あれは新しい祭だよ。アートだよ」
カタカタカタカタカタカタ……。これはネズミが天井を走る音だ。

その部屋に一緒にいた好漢テラマチくんも真剣に地図を眺めている。
来年、屋久島あたりでも皆既日蝕が見られるらしい。
それを見にいこうと2人で計画しているのだった。

それから3人でプチマロンケーキを食べながら、天文雑誌の宇宙の写真を眺め、宇宙の話をした。ツヨシはこれから毎年、皆既日食を見に世界各地に行く、と言っている。
「次、日本で皆既日蝕が見られるのは27年後だよ。新潟とか茨城でね。これはかなり長い時間見れるよ」
「それは絶対に見にいくやろなあ」
「しかし27年後かあ」
「長いなあ」
「そのとき俺、うわー、57歳だ」
「ぼくは52歳ですよ」
「ゆうさんは?」
「60歳を楽勝越えてる。って、ほっとけ!」
「…………」
「…………」
「はあ」
「はああ」
カタカタカタカタカタカタ………。

そのとき、27年後に日蝕を見ている自分がリアルに頭に浮かんだ。そして、老いた自分がそのとき何を考えているか、はっきり見えたような気がした。
ぼくはそれを2人に言った。
「そのとき、自分がどんな状況になってるかわからんけど、でもたぶんな、日蝕を見ながら、“27年前に、このボロアパートで3人で語っていたよな”って思い出してるんちゃうかな」

ツヨシもテラマチくんも「あ」と口を開け、それから、「ああ〜」と嘆息をもらした。そして3人で笑った。

……それで、27年後、日蝕を見ながら思うのだろうな。
あのボロアパートの一夜から、ここまで、早かったな、と。







| 生活 |
サンマと美女
《 新サンマ(宮城県産)1尾89円 》
西友でその値札を見たときは、「秋だなあ」としみじみ思い、そのあと腕を組み、銀色に光るサンマたちを前にしながら、「さて、どうしよう」と思索にふけった。

動物として、俺は今、このサンマをものすごく欲している。
しかしウチのアパートの換気扇はサンマの煙に耐えられるだろうか。――否。とても無理だ。窓や壁に設置され、ぶおおおおっと直接外に煙を吐き出す換気扇ならいいが、ウチのは天井に申し訳程度についているタイプだ。サンマどころか、野菜炒めですら、熱や蒸気や煙がキッチンに充満する。

しかし。
人には知恵がある。人智というやつである。
この人智でもって、じつはすでに素晴らしい解決法をぼくは見出し、少し前から実践しているのだ。

それはどういう方法か。
みなさん、メモの用意はいいですか?
ずばり。

玄関先にカセットコンロを出して調理する!

換気扇はこの大空。地球。テラ。
もっとも最近はその換気容量(?)が限界に達しつつあり、北極の氷が溶けているようだが、野菜炒めひとり分、サンマ1匹ぐらいは許してもらえるだろう。そもそも部屋で調理しても温室効果ガスの排出量は変わらないわけだし。

ということで、サンマを買った。
生サンマなので、「淡路島の藻塩」を擦り付ける。そのまま焼いてしょうゆを垂らすのもいいが、やはり魚は塩焼きがいちばんだと思う(またこの淡路島の藻塩がうまい!)。
そうしてカセットコンロをいつもの玄関先にセットし、点火。

サンマを焼くこの姿を、隣の映画監督Mくんに見せたかったが、今日は留守のようだ。
Mくんが初めて、ぼくの調理姿――玄関の前でうんこ座りをしてチンジャオロースーを作っている姿――を見たときは、さすがに絶句していたが、最近は馴れてきたようで、「お、今日は麻婆豆腐ですか」などと普通に声をかけてくる。わがアパートの日常風景と化しているのだ。

(ちなみにMくんの部屋は角部屋で、換気扇が窓についているから、こんな苦労をしなくて済む)

さて、煙は大空へと舞い上がり、サンマが焼きあがった。
作りおきしておいたヒジキの煮付けを小皿に盛り、にぼしで作った豆腐の味噌汁を椀に入れ、ご飯とともに食卓に並べる。
そして、いただきます。

いや。はや。阿佐ヶ谷のこのウチでサンマを食べたのは初めてだが、これは……。ぐ、ぐ、ぐ……。ヒジキも。ああ味噌汁も。なんたる調和。完璧だ。パーフェクトワールド。
無心で食らい、最後に静岡のお茶を飲んだら、白露山のようにキマッてしまった(あるいは露鵬、または若ノ鵬)。

あまりのキマりっぷりに、しばらく立てずに放心していたら、携帯にメールが来た。見てみると、友人からだ。
「いま美女と3人で飲んでるけど来ない? 店はてめえのウチから歩いて5分の『バンダリ』だ」

ぼくは哲学者のような目でそのメールを眺め、そして次のような返事を打った。
「いま俺はサンマでキマっている。完璧な世界にいる。いまは何もいらない。無欲だ。したがって、そっちはそっちで楽しんでくれ」

そして本当に行かなかったら、翌日、その友人から我が身を案ずるメールが送られてきた。


| 生活 |
ダメだこりゃ。
自民党総裁選びが大賑わいだけど、昨日、NHKの9時のニュースに民主党の小沢さんが出て、生でしゃべっていた。

ダメだこりゃ、とかなりガックリしてしまった。
言っていることがスカスカだ。中身が見えないし、現実味もない。
予定外のことを聞かれると、
「それは君、アレだよ」
ぐらいの返答しかできない。びっくりしてしまった。
昨日のあの放送を見て、彼の意見に納得した人がひとりでもいるのだろうか。
(ま、そのあとの自民党候補者たちも終わっていたけど)

こりゃ、政権交代など夢また夢。というより、小沢さんに政権をとる意思などないんだろうな、やっぱり。

しかし政治家をやっていて、人前でしゃべる機会は多いだろうに。なんだろう、あの拙さは。いまにはじまったことじゃないけど、昨日のは本当にひどかった。
ま、これまで主張といえば選挙対策ばかり。もともと中身はないのだろう。だからなおさら言葉もすらすら出てこない。

と思っていたら、さっきあるコメンテーターが言っていた。
2人の首相が続けて政権を投げ出すという前代未聞のことが起こった現在。民主党にすれば攻勢をしかけなければならないはずなのに、なぜ小沢さんはあまりテレビに出ないのか。
その疑問に、そのコメンテーターはこう答えていた。
「いや、各テレビ局は小沢さんにオファーを出しているんです。でも出ようとしない。いろいろ突っ込まれるのが苦手みたいです」

はあ。ダメだこりゃ(チョーさん風に)。




| 社会 |
ブルジョアおばはんとの闇の攻防
オフィス・サンマルクで原稿を書いていたときのことだ。
ちなみにこのオフィスは「チョコクロ」ことチョコクロワッサンで有名だが、ぼくはどうもあれが苦手だ。油っぽすぎる。それに表面がパリパリ固くて、噛むとき、よほど気をつけない限り、皮が飛んでしまう。その皮がパソコンのキーボードにふりかかる。よくないだろう。パソコンに。オフィスなんだから、もう少し考えてもらいたいものだ。

とまあ、そんなことはどうでもいいのだが、ぼくの隣におばはんとおばあさんが座った。どちらも派手な服を着て、金のぶっといネックレスやゴテゴテの重そうな指輪をつけている。ぼくのアンテナ(鬼太郎の妖怪アンテナみたいなやつ)がピピッと反応した。おばはん、静かにせえよ。ここはオフィスやぞ。と心の中で念じる。ていうか、おばはん、そんなブルジョアな身なりしてるんだから、もっと高級オフィスに行けよ。

案の定、おばはんたちはぼくの仕事を妨害するような会話を始めた。
おもしろいもので、隣で話をされて気になる内容と、まったく無視できる内容とがある。このおばはんたちの会話は前者だ。

「やっぱり金(キン)よ、あなた。どこどこでどんな感じでどのくらい金を買ったら、どうなってこうなって。ぐふふふ」
「株よりいいかしら。株はやっぱり怖いわよね。でもどこどこの株もあれこれえんやこら。ぶひひひ」

とまあ、延々こんな話を、すぐ隣で、ひそひそ声でやるのだ。気にするな、というのが無理だ。

ちょっとあんたら、ここはオフィスやぞ、そんな俗っぽい話をしたいなら「ルノワール」にでも行ってくれ。とよほど注意してやろうと思ったが、そこはぼくも大人。アイポッドを取り出して、イヤホンを耳にブスッ。ジャズを大音量でかけて、俗世間との関係を絶った。

それでしばらく原稿を書いたあと、腹が減ってきたのでパンを食うことにした。
チョコクロではなく、ハニーチーズを購入。席に戻って、アイポッドを止め、ハニーチーズを食べていると、おばはんたちは旅行の話をしていた。
イタリアがどうの、パリがどうの、とか言っていたが、やがて「国内旅行もいいわよ」という話になった。
「この前、白浜に行ってきたのよ。和歌山の白浜」
ぼくの耳がピクンと跳ね上がった。
このおばはんは、わが郷里をどのように見たのだろうか。
「へえ、どうだった? 白浜」
「きれいだったわよ。でもま、結局、自然のいろいろなところを見るだけで」
けっ。てめえは何もわかっちゃいねえ。
「あと熊野古道のほうも行ったわよ。あれ、えっと、なんて言ったかしら。あの、ほら、大きい滝」
「えーと、あれね。えーと、そうだ。ナスの滝」
「そうそう、それ、ナスの滝。たくさん歩いたわよ。ナスの滝。神社から見るナスの滝がよかったわ」

「キョエエエエエエエッ!!!」とぼくは奇声を発し、サンマルク内のすべてのテーブルをひっくり返しながら、デトロイトメタルシティばりにこう絶叫したくなった。
「那智(なち)の滝じゃあっ!」




| 生活 |
モンスターの酷似
小ネタで、しかも内輪的な話です。
なので、当「エッセイ蔵」を最近お知りになった方は、以下すっ飛ばしてくださいっ。


昨夜、家の電話が鳴った。
受話器をとると、
「石田さんですか、あははははははは!」
と、電話の向こうの男はいきなりすごいテンションで笑い出した。
笛吹きの想くんだ。
インドから帰ってきたのか?
いつ?
2週間ほど前にインドから手紙をもらったばかりなのに。
と思っていたら、新潟の怪人、渡辺さんだった。

これまで考えたこともなかったが、そういやこの2人のぶっ飛び方はそっくりだ。なんと声まで似ている。
それでよくよく考えたら、もうひとつ共通項があった。ぼくが勝手に、なんの脈絡もなく、「この人に政治をお願いしたい」と思ったのがこの2人だった。


それにしても総裁選。
山本一太や石破まで出馬に意欲とは……。
どこまで賑やかしを出せば気が済むんでしょうか。
ところで、山本一太と石破、1歳しか違わないと知って絶句。







| 生活 |
★新刊が発売されました
『自転車お宝ラーメン紀行』 レトロな路地や古い喫茶店など都内の“お宝”を探索しつつ、昔ながらのラーメンを目指す大冒険(?)紀行です。産業編集センター刊。1100円+税。感想お待ちしています!→yusukeishida@hotmail.com
★dancyuウェブに連載中
食の雑誌「dancyu」のウェブサイトに「世界の〇〇〜記憶に残る異国の一皿〜」というアホな記事を書いています。→https://dancyu.jp/series/ikokunohitosara/index.html
CALENDAR
S M T W T F S
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
282930    
<< September 2008 >>
LINKS
PROFILE
RECOMMEND
行かずに死ねるか!―世界9万5000km自転車ひとり旅 (幻冬舎文庫)
行かずに死ねるか!―世界9万5000km自転車ひとり旅 (幻冬舎文庫) (JUGEMレビュー »)
石田 ゆうすけ
7年走って見つけた世界一の宝とは?
RECOMMEND
RECOMMEND
洗面器でヤギごはん (幻冬舎文庫)
洗面器でヤギごはん (幻冬舎文庫) (JUGEMレビュー »)
石田 ゆうすけ
食べ物ストーリーでつづる世界一周紀行
RECOMMEND
道の先まで行ってやれ! 自転車で、飲んで笑って、涙する旅 (幻冬舎文庫)
道の先まで行ってやれ! 自転車で、飲んで笑って、涙する旅 (幻冬舎文庫) (JUGEMレビュー »)
石田 ゆうすけ
ニッポン飲み食いハチャメチャ自転車紀行。文庫改訂版
RECOMMEND
地図を破って行ってやれ!  自転車で、食って笑って、涙する旅
地図を破って行ってやれ! 自転車で、食って笑って、涙する旅 (JUGEMレビュー »)
石田 ゆうすけ
日本紀行第2弾。東京、茨城、滋賀、屋久島、種子島、土佐、北海道、熊本、三陸…
RECOMMEND
大事なことは自転車が教えてくれた: 旅、冒険、出会い、そしてハプニング!
大事なことは自転車が教えてくれた: 旅、冒険、出会い、そしてハプニング! (JUGEMレビュー »)
石田 ゆうすけ
旅のハプニングやノウハウをつづった実用エッセイ
RECOMMEND
台湾自転車気儘旅 世界一屋台メシのうまい国へ
台湾自転車気儘旅 世界一屋台メシのうまい国へ (JUGEMレビュー »)
石田ゆうすけ
台湾一の感動メシを探せ! 初のフォトエッセイ
RECOMMEND
道の先まで行ってやれ!―自転車で、飲んで笑って、涙する旅
道の先まで行ってやれ!―自転車で、飲んで笑って、涙する旅 (JUGEMレビュー »)
石田 ゆうすけ
ニッポン飲み食いハチャメチャ自転車紀行
RECOMMEND
「勝ち論」 本気で仕事する24人からのメッセージ
「勝ち論」 本気で仕事する24人からのメッセージ (JUGEMレビュー »)

「本気で仕事する24人」にぼくが入っています(笑)。デカイこと言っています。
SELECTED ENTRIES
CATEGORIES
ARCHIVES
RECENT COMMENT
RECENT TRACKBACK
モバイル
qrcode
SPONSORED LINKS