石田ゆうすけのエッセイ蔵

旅作家&エッセイスト、石田ゆうすけのブログです。


※親サイトの『7年半ぶっ通しチャリ世界一周』はパソコンを新しくしたためにストップしたままです。
近況報告や各種案内は、もうしばらく、当ブログにて行います。
年末のご挨拶
ああ、今年もあと、5時間!
みなさんは、どんな年末を過ごしていますか? 
ぼくは年末も正月もなく、東京に残って、本の原稿を書いています。大掃除もできませんでした。でも、さすがに、大晦日、仕事オンリーだと、悲しいので、いまから、隣のMくんの部屋で、タコしゃぶします。

さて、ブルーラグーン探険記の最終回。もう、来年にまわそうかとも思いましたが、やはり新しい勝負の年を迎えるにあたって(毎年、勝負の年ですが)、前年のものを持ち越すのもさえない、と思い、無理やり、書き終えました。こんなことしてる場合かよ、と内心呆れながら、でもかなり楽しく書かせてもらいました。
「流れ」のある話なので、昨日のブログの下に貼っておきます。感想待ってます(考えてみると、全8話、けっこう時間をかけて書いたんだぜえ。ぜんぶ読んだ人、感想ぐらいくれよお ←本音)

ではでは、みなさん、来年もよいお年を!
| 生活 |
炎の無人島探険記、とうとう最終回!
いかん。もう今年も終わる。
ということで、無理やり、持っていきます。

炎の無人島探険記 最終回!

タイムカプセルの手がかりは、「2またやし」だった。
しかし、島に来てみると、「2またやし」だらけだった。
16年という月日のあいだに、ひとつしかなかったはずの「2またやし」が、ずんずん増殖していたのだ。隊員たちは、無情な自然を前に、ある者は頭を抱え、ある者は大地を両手で叩いて嗚咽し、ある者は力なく笑った。
しかし、例の地図を見よ。
長さが細かく書かれているではないか。
そこで、メジャーを使って、あちこちの「2またやし」と、まわりにあるヤシの位置関係をはかってみた。すると、地図に該当する「2またやし」は、ひとつにしぼられたのである。間違いない。タイムカプセルは、このヤシから、1.8メートルの場所だ。
しかし、初日の今日は、まだ、掘らない。
ボボ隊長は、みんなに宣言した。
「掘るのは明日や」
ボボには、みんなに内緒にしている、「秘密」があった。
三代目隊長、トミー平山に関しての、極秘任務である。

トミーは、約2ヶ月前に、飛行機の早割りチケットを買って、準備を万端に整えていた。しかし、直前にひどい風邪を引き、最後の最後まで悩んだ末に、出発の日に、《辞退します》というメールを隊員たちに送ってきた。彼の回復を祈っていた隊員たちの悲痛な叫びが、ブルラグ掲示板にこだました。

そして、探検の初日。
隊員たちが、バーベキューに興じている最中、ぼくは内緒でこそこそと、ちんこをいじるように、携帯を操作していた(この無人島は、なんと携帯が通じるのである)。
メールの相手は、トミーだった。彼は、こんなメールをよこしてきた。
《だいぶ回復してきました。なんとかなりそうです。明日、行きます》
いよいよアホである。
結婚前で金がないというから、早めに申し込んで、安いチケット(片道16000円)を買ったというのに、そのチケットを台無しにしたあげく、さらに連休の正規料金(片道36800円)でチケットを買って、やってくるというのである。残り、わずか1泊のキャンプのために。
トミーは、こう言うのだ。
《あと20年も、もんもんとするのは嫌ですから》

前に書いたとおり、ぼくたちは今回、16年前のタイムカプセルを掘り起こすと同時に、新しいタイムカプセルを埋めて、20年後に掘り返しにこよう、と言い合っていた。そのときまで、トミーは、我慢できない、というのである。

このような、トミーとのやりとりを、ボボは、みんなに内緒にしていた。トミーもボボも、最高のサプライズを演出したかったのだ。

そして、2日目。トミーが着くのは、夕方だ。そのときまで、ボボは、タイムカプセルを掘ろうと躍起になっている隊員たちを、抑えておく必要があった。せっかくトミーが来るというのに、彼を差し置いて、宝を掘るわけにはいかない。それが地中から引き上げられる瞬間の感動を、誰ひとり欠けることなく、みんなで味わいたいではないか。

しかし、無邪気な隊員たちは、朝飯の「絶品手作りハムサンド」を食べたあと、早くも朝っぱらから「じゃあ、掘りますか」などと言っている。
ボボは、腹の底で、苦虫をかみつぶしながら、初代隊長としての強権を発動した。
「まだや。まだ、機は熟していない」
隊員たちは、なんのこっちゃ? という顔をしている。
しかし、異を唱える者もなく、静かに、時は過ぎていった。

そして、昼過ぎになった。
大鍋でラーメンをつくり、みんなで顔を寄せ合うようにして食べ、ああ満腹。さあ、もう、あとは、あれでしょ。
「では、そろそろ、掘りますか」
隊員たちの顔は、みな一様に、やる気に満ちていた。彼らを、これ以上引き止めるのは、無理だ。ボボの口から、トミーの秘密が、いままさに吐き出されようとした。

「……腹いっぱいやから、ちょっと休憩しよ」
隊員たち、再び、なんのこっちゃ? である。
このときの、ボボの苦しい胸のうちを、想像してほしい。
想像しながら、つづく。

次回は、最終回、その2、です。
(下につづく)





『炎の無人島探険記、ほんとうの最終回』

「腹いっぱいやから、タイムカプセル掘るのは、あとや。あとにしよ」
ボボ隊長の、その言葉に、誰も納得していなかった。
「このヒゲオヤジ、どういうつもりだ」という不信の念が、隊員たちの顔にありありと見える。そりゃそうだ。すでに午後2時近く。早くしないと、日が暮れる。あとにまわす意味がわからない。
しかし、全員、釈然としないまま、焚き火の前に座り、所在なく、火をつついたりして、時間を過ごした。

30分ぐらいたっただろうか。
「こんちは」
隊員たちの背後、海のほうから、ぬっ、とトミーが現れた。
人は、予期せぬ出来事に鉢合わせすると、一瞬、感情も、表情も、失うらしい。……なぜ、海のほうから、人が現われるんだろう? この焚き火の前に、7人全員いるはずなのに、なぜ? 無人島のはずなのに、なぜ? もしかして、トミー? いや、そんなはずはない。トミーはいま、東京で寝込んでいるはずだ……。

「ええええええ〜っ!!」
火がついたようにみんな絶叫、島は大騒ぎとなった。すべての事情を把握し、みんなの反応をじっくり観察していた、ボボの、このときの楽しさといったら!
みんなさんざん大笑いしたあと、口々に言うのである。
「そういうことかあ! なんでタイムカプセル掘らんのか、まったくわけわからんかったんやあ!」
やんややんや。

こうして、全員顔を並べた、ブルラグ隊の勇者たちは、スコップを持って、くだんの「2またやし」の前にやってきた。固唾をのんで、大地を凝視する、8人。タイガージェット真隊員が、ダウジング棒を出してきた。ボボが、そんなもんいるか、と出発前に言っていたのに、タイガージェットは何を心配したのか、ほんとうにそれを作って持ってきていたのだ。それじゃ、まあ、せっかくだから、と、実験開始。

これが、バカ笑いだった。
ここだろう、と思える場所に来ると、ダウジング棒は、なんと、ほんとうに反応するのである。このとおり。





むにょ〜ん、と、ダウジング棒がゆっくり開く様子が、あまりにもバカっぽくて、ぼくたちは、文字通り腹を抱え、涙を浮かべて笑った。
しかし、ほんとうに、誰がやっても、その場所で開くのである。これはますます、間違いない。
ということで、掘り起こし、開始。
ここで活躍したのが、エンプティ三国隊員だった。

話は、ちょっと横道にそれるが、これまでの写真を見た読者の、数名の方から、「裸じゃないやん」というお叱りをいただいた。それについては、複雑な事情がある。

寒かったのだ。
以上。

いや、寒かったのはほんとうだが、しかし、ぼくたちは、やはりダメになっていたのだ。無邪気に、天真爛漫に、裸になれなかったのだ。そんなことしておもしろいの? という、大人のアンニュイに、骨が蝕まれていたのだ。
その倦怠を、吹き飛ばした男がいる。
エンプティだ。






彼はこのために、わざわざ「ブルラグふんどし」を作って持ってきており、寒イボが出るほど寒いのに、タイムカプセル掘りをしているあいだ(ほかの隊員が掘っているときも)、ずっとこの格好でいた。ボボには、エンプティの姿が、ご来光のように、まぶしく見えた。

さて、もう、書くのが疲れてきたので、さっさと終わろう。今年も、もう終わる。
結論。
ぼくたちは、仲間を「総括」して埋められそうなほどの、大穴を掘った。しかし、ぼくたちの青春を押し込めたタイムカプセルは、出てこなかった。トミーにも感動を分かち合わせよう、と、掘り起こし作業を必死で引き延ばしたというのに、トミーどころか、誰ひとり感動できなかった。ダウジング棒はやはりいい加減だった、ということだけが、わかった。

しかも雨がすごくなってきた。骨まで凍える冷たい雨だった。
それでも、ぼくたちは気を取り直し、新しいタイムカプセルに、じじいになった自分への手紙と、いろんな宝を、それぞれが入れ、そして、それを、さっき掘った大穴に埋めた。地図は描かなかった。なぜなら、16年前の地図が、そのまま使えるからだ。「2またやし」から1.8メートルのところに、それはきちんと埋められている。

翌朝、迎えに来た船に、ぼくたちはのった。布施博に似た、気のいい、40過ぎぐらいの船頭さんは、開口いちばん、
「見つかった?」
と聞いてきた。
「見つかりませんでした」
と答えると、船頭さんは、へっ? という顔をして、それから、笑った。

遠ざかっていくB島を見ながら、ぼくたちは隊歌をうたった。
C町の港に着くと、きれいな女性が、車のそばで、待っていた。どうやら、船頭さんの奥さんらしい。ぼくたちが荷物を降ろし終えると、船頭さんは、その車に乗り込み、そして窓を開け、
「じゃあ、また20年後に」
と言って、ははは、と笑い、去っていった。
雨は上がっていた。
ぼくたちも、それぞれの車に乗り、近くの温泉に行った。
そのあと、みんなで握手をして、別れた。

20年後。
あの船頭さんにも、すぐに会えそうな気がする。





追記
16年前のB島探検は、じつはビデオで記録されている。
副隊長のジェリーしげちゃんが、今回の探検のあと、そのビデオを見たらしい。すると、驚愕の事実が判明した。
地形が思いっきり変わっていたというのである。
大きな石がごろごろしていて、ここには、どうがんばってもテントは張れない、と思っていた場所に、16年前のぼくたちは、テントを張っていたらしい。タイムカプセルもその近くに埋めたのだ。地表の土が流されて、その下の石がむきだしになったのだろうか。しかし、それがどうしても想像できないくらいの変わりようだった。
いずれにしても、我々は今回、前の場所とはてんで違うところにテントを張ったわけで、同時に、タイムカプセルを目指して掘った場所も、まったく見当違いだったわけである。マントルまで掘っても、タイムカプセルは出てこなかっただろう。

ということで、待ってろよ、20年後。タイムカプセルを2つ、掘ってやる。
じじいになる楽しみも、作れるものである。

追記2
今回の探検行には、トミー隊員の結婚を祝う、という目的もあり、彼が遅れて到着したあと、用意されていたクラッカーが鳴らされたりもした。

で、昨日、関西支部のブルラグ隊(および、ほかの仲間たち)が、学生時代から懇意にしている居酒屋に集まって、あらためてトミー隊員の結婚を祝う会(および忘年会)を開いたらしい。その会で、こんなお祝いの品が、トミーに渡されたそうだ。



お手製の、ブルラグ黄金像である。

はい、これで、ほんとにおしまい。











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年の暮れの、ある日のこと
今朝、急に、幸せを感じた。
暗いうちに起き、音のしない部屋で、コーヒーをいれているときだ。
今日も、温かい部屋で目が覚め、好きなコーヒーの香りをかぐことができるのだ、と思った。
頭のなかに、いろんな場面が広がっていた。
朝、テントから這い出し、目の前に広がった、ドイツの、霜のおりた、枯野。
コーヒーを飲みながら、見ていた、チェコの、黄金色に光る、草原。
酒場の帰りに見た、タンザニアの、星空。
ココアで体を温め、白い息越しに見ていた、アリゾナの、砂漠。

いまいる場所から、広がれる。過去へも、遠くへも。
自分は、生きている喜びを、自分に感じさせるために、経験をしたのだ。そんなふうに思った。

夜になって、シンジからメールがあった。
アフリカをいっしょに走り、ぼくがマラリアにかかったときには看病してくれた、友だ。
シンジは、世界を3年まわったあと、31歳で帰国し、それから必死で勉強して、教員試験に受かった。現在、静岡で高校の先生をしている。
そのシンジから、さっき、子どもが生まれた、とメールがあった。
ぼくはすぐに電話した。
40分ほど話をした。そのなかで、シンジはこんなことを言った。

どこかに最高の幸せがないかって、自分は無意識に、そんなことを思いながら、世界をまわっていたと思う。でも、それは違った。どこにでも、あるし、どこにでも、ないものだ。ゆうすけ、俺は、教師になって、思ったよ。それは、自分の足元にあるんやって。でもそれを心から思わせてくれたのも、旅の経験があったからだよな。

シンジは子どもの名前を、広大とつけたそうだ。
いい名前だな、とぼくは言った。おめでとう。

今年も、あと2日。
| 生活 |
ツヨシと風呂に行ったら。
1日中、部屋に閉じこもって、原稿を書いていたら、多少気が狂ってきたので、変態詩人のツヨシを誘って、銭湯にでも行こうと、深夜0:30、歩いて3分のツヨシの部屋にいきなり行って、ドアを叩いて、そしたら、電気がついているのに、なかなか出てこない。独身男の日課をやっているのか、と思い、それは申し訳なかった、俺も野暮じゃない、と、再びドアを強く叩くと、ツヨシが幸せそうな顔で出てきた。

で、ふたりで銭湯に行った。そして、壁の大鏡を見て、愕然とした。ぼくのわき腹が、ぽこり、と出ている。いつの間にこんな贅肉が。

今年の夏、神宮球場に、阪神戦を見にいったとき、キャッチャーの矢野が、外野のライト側の芝生の、ぼくのすぐ目の前で、足を45度に浮かして、固定し、上半身をひねりながら上げたり下げたり、という腹筋運動をしていた。それは、あたかも、「ゆうすけ、こうやるんだ」とぼくに教えてくれているように見え、その日以来、朝のパンを焼く3分間を使って、ぼくもその腹筋をやった。すると、腹筋がプリップリに割れた。飲み会などでは、人に見せびらかし、あまつさえ、触らせるなどという、精神崩壊による醜態も、幾度となく演じてきた。

朝の腹筋は、いまも続けているのに、なぜ、こんな贅肉が?
理由は、すぐに思い当たった。
最近、チョコレートの消費量がすごいのだ。
タバコを吸わないせいもあり、原稿に集中していると、口に何かがほしくなる。甘いものがほしくなる。で、これを食う。


サチコ中毒は、必死の思いで、ちょっと前に抜け出したけど、いまはこの「フレークナッツチョコ」略して、フナコにはまっている。中毒寸前である。いやはや危なかった。油断していたのだ。無意識に手が伸び、気がつけばチョコが口に入っている、という危険な領域に、もうすぐで踏み込んでしまうところだった。いまならまだ引き返せる。気をつけなければ、とこのブログを書きながら、いつの間にか、フナコが口に入っていた。どうやって入ってきたんだ?
| 生活 |
炎の・・・7
クリスマスイブ!
ということで、昼に納豆と漬物を食べた。
で、晩飯は「やっぱりクリスマスは豚角だろう」とぼくも考え、豚バラブロックを買いにスーパーに行ったら、普段それが置かれているところには骨付きチキンが並んでいた。
けっ。あほか。なんで豚バラブロックを俺に売ってくれないんや。
でもまあ、クリスマスだもんな。しかたがない。郷に入っては郷に従えだ。
ということでイカとネギを炒めて食うことにした。またかよ、と定期的に読んでくださっている方からは言われそうだが、最近のマイブームはイカとタコなのだ。
イカとタコ。ぷぷっ。

そんなわけで、メリークリスマス。
はんてんを着て、ひとり寒い部屋で湯たんぽを抱え、下らない文章を書いているサンタから、みなさんへクリスマスプレゼントです。


『炎の無人島探検記、その7!』

島でのミッションその1は、釣りである。
餌のゴカイを針につけて沖に投げ、そのまま放っておいた。
で、みんなと夕日を眺め、ビールを飲んで、しみじみ。

日が落ちるのを見届けてから、再び釣竿のところへ。
引き上げてみると、ぐぐーっ、と竿が弓なりに曲がった。
「うわっ! かかっとる!」
全身の毛穴が開いた。でかい!
が、興奮もほんの束の間、竿がふっと軽くなった。ああ、外れてしまった。
そのままリールを巻くと、糸の先には、ベラのような魚が半分に食いちぎられた状態でくっついていた。
イカだ。
最初、このベラがゴカイに食いついて針にかかり、次にイカがそのベラに食いついたのだ。釣り界ではよくあることである。うう、残念。

さて、初日の夜はバーベキュー。
さんざん飲み食いし、アホな話をし、やがて宴が終わると、ボボの出番である。
まず、かすかに火の残っている炭の上に、アルミホイルを敷く。そのアルミの上に、木や割り箸を細かく削ってのせる。しばらくすると、木のチップから煙が立ち始める。その上に、さっきまでバーベキューをしていた網を再びのせ、塩をした豚モモのかたまりをのせる。さらに、その肉を覆うように、段ボール箱をかぶせる。こうしてひと晩ほうっておけばハムの完成だ。
ちなみに、このやり方は、16年前に、ボボのサル知恵から編み出されたもので、正式なハムのレシピでもなんでもない。だからよい子は注意しよう。
そして翌朝。



みごとにハムができていた。
それをスライスして、バターで炒め、卵を落としてハムエッグを作る。それを、炭でトーストしたパンにのせ、その上にレタスとトマト、さらにマヨネーズをかけて、もう1枚のパンではさみ、ばくっ。
「ぐががががががっ」
うまあああっ。なんじゃこりゃ。炭で焼いたパン、食べたことあります? 表面、カリッ、中は、さくっ。めっちゃうまーいやーん。

では、ここからは、ブルラグ隊のグルメショー。



B級魚はいくらでも釣れた。これらを片っ端から焼いて食う。
そして、この無人島探検のために、最近釣りをはじめたというジェームズは、なんと、ルアーでヒラメを釣った。これをビギナーズラックと呼ぶ。



で、このヒラメをアルミで包み、バターを落として、網の上でホイル焼き。
食べてみると、
「うがががががががっ!」
ゆで卵のようにぷりっと白い身は、うまみがぎゅっとつまっていて、とろっと甘い。これまでヒラメは刺身でばかり食べていたけど、火を通したほうがうまい、ということに、このとき気づいた。

こうして、隊員たちは、自分たちの王国で、美味と美酒に酔っていたわけだが、そんな彼らの間抜け面を横目に、ボボ隊長はひとり、よからぬ作戦を考え、内心ほくそえんでいたのである。

つづく。

……こんな終わり方ばかりですが、わざとです。
で、前回の、「血も凍るような恐怖が近づいていた」という記述について、解説しておきますと、イカに半身を食いちぎられたベラにとって、とてつもない恐怖が近づいていた、という意味だったのです。く、くるしい。

| グルメ |
サッカーのためになる解説 & 炎の無人島探険記6
昨日はサッカーのトヨタカップの決勝があった。
でもそれどころじゃない。
いま一番やらなければならないことは何か。
新刊本の執筆だ。締め切りまであとわずか。
集中しろ。
真剣に書け。
全力でやれ。
すべてを注ぎ込め。
命をかけろ。この野郎。
と、口の中でごにょごにょ言いながらテレビをつけた。
で、いきなりおもしろいものを見た、というより、聞いた。

この大会は、各大陸のクラブ王者が激突するというもの。
でも結局、決勝は毎回、南米王者とヨーロッパ王者の対戦となる。
北中米王者も、アジア王者(今回はガンバ)も、オセアニア王者も、結果だけ見れば、たんなる賑やかしに終わっている。まだまだヨーロッパ王者を脅かすレベルではない。

で、試合開始前に、アナウンサーがこう言った。
「今年もやっぱり、南米王者対ヨーロッパ王者になりましたね!」

すると、解説の、元エースストライカーの武田は、こんなことを言ったのである。
「歴史は繰り返す、ということですねえ!」

武田! お前、おもろい!
(北澤だったかもしれない……)

さて、以上が枕である。
本題に入る。

というわけで、無人島に着いた、わがブルラグ隊一行。
タイムカプセルの唯一の手がかりは「2またやし」だったが、島は「2またやし」だらけだった。
そんな仕打ちにもめげず、テントを張り、


すぐに夕方が来て、青春ドラマの主人公と化した。


なんて、かっこいいんだ、俺たちは。
しかし、平和な時間は、ここまでだった。
血も凍るような恐怖が、刻一刻と近づいていることに、彼らはまだ気づいていなかった。

つづく。

| スポーツ |
きれい好き
講演をすると、ときどき、こんな質問がくる。
「風呂にいちばん入らなかったときで、どのくらいですか?」
質問者の目はらんらんと輝いている。
すごい答えを期待しているらしい。
で、ぼくが答えを言うと、質問者は十中八九、拍子抜けした顔をする。

答えは、たぶん、1週間。
そんなもんである。
もっとも、アフリカやシルクロードでは、風呂といっても、タライ1杯の水だったりしたが。

で、ここ数日、この記録に追いつけ追い越せとがんばっている。
前にも書いたように、いま、新刊本の追い込みで、ゾンビ化している。目の下に黒いクマができ、髪はマッドサイエンティスト、目つきも狂人のそれだ。朝、鏡を見ると、我ながら、ウオッ、と思う。

で、ぼくは昔から、ひとつのことに熱中すると、ほかのことができなくなるたちで、掃除もしない、メールもしない、ゴミ出しも忘れる、そして、風呂も入らない(ふだんはきちんと入っている)。
余談だが、そんな状態でも、料理だけはきちんとやる。優先順位は、風呂よりはるかに高い。今日は、イカと長ネギの辛味噌炒めを作った(すんげうめかった)。寸暇を惜しんで書いているはずなのに、イカの皮をむき、包丁の背で吸盤をゴリゴリとりながら、この優先順位は正しいのだろうか、と少しわからなくなったが。ちなみに、副菜は、作りおきしておいた肉ジャガ。当然、煮干でダシをとった豆腐の味噌汁も、白飯の横に、添えて。

閑話休題。
ま、そういうことで、いま、ノン風呂期間は、5日。
髪のかゆみも消えた。
もう少しがんばって、記録を塗り替えようかと思っている。
さっき、トイレでズボンをおろしたら、すごいイイにおいがして、ああ生きている、と思った。

誰だったか忘れたが、ある作家は、執筆中はシビンで用を足すと言っていた。
ぼくはきれい好きなので、そんなことはしない。





| 生活 |
タコとサッカーの夜
新作の初稿〆きりが1月10日。
だから、なかなか、バタバタしている。
今年は、正月も返上して、大晦日も無視して、クリスマスなどはハナから黙殺して、原稿を書こうと思う。
でも、昨日は、サッカーの試合。
ガンバ大阪 vs マンチェスターユナイテッド。
こんなもんがあったら、たとえテレビをつけていなくても、気になって、原稿など書けまい。
しかも、北海道から巨大なタコが届いた。
もう無理だ。
ということで、隣人の映画監督、Mくんと、最近知り合った若きカメラマンのYくんと3人で、「タコしゃぶ」をやりながら、「ガンバvsマンU」観戦、という、この世で最も幸せな大会をやることにした。

ということで、ぼくは朝から、タコを切った。
半解凍した、巨大タコ足を、薄さ0.5ミリに切っていく。
磨きぬかれた、職人の技である。われながら美しい。

そして、夜になり、しゃぶしゃぶ。
昆布でダシをとった湯に、紙のように薄いタコをサッと湯にくぐらせ、おろしポン酢で、ぱくり。
「ぐごごごごごごっ」
3人、目を見開き、顔を見合わせ、そして、ニタリ。
うまい。うますぎる。

サッカーも、ガンバ予想以上の大健闘で、おおいに盛り上がらせてもらった。
ちなみに、5-3でマンUの勝利。
やはり世界との差は、いかんともしがたい。近づくことはできても、超えることは、あと1世紀は無理なんじゃないか。
余談だが、バロンドールに輝いたあの選手は、ぼくはどうも好きにはなれない。

で、今日のこの文章に、オチはない。
「タコの足を切る」「タコしゃぶ」といった言葉を、ただ書きたかっただけである。

タコ。
なぜ、この語は、こんなにおもしろいのか。
じつにくすぐったい。
たった1語で、これほど行間の広がる言葉もない。

えっと、すみません。
眠気覚ましに、書きました。

次こそ、無人島の全貌を。


| グルメ |
ようやく、わが末子が。
無人島の探険記は、まだ少し続きます。
年内に終わらせることを目指し、ただいま急ピッチで、膨大な量の記録、写真、データたちと昼夜をおかず格闘し、情報のファイリングにつとめています。
というのはもちろん、ブッシュばりのジョークで、ほんとうは新作の執筆に夢中です。これについては、もう少ししたら、詳細を報告できると思います。

その前に、年末にうれしい知らせが届きました。
拙著、世界旅行の3作目、『洗面器でヤギごはん』が重版となりました。
ぼくとしては、この本が個人的にはいちばん好きなのですが、さすがに3作目ともなると、飽きられたか(ひきつり笑い)、食べものと旅、というコンセプトの訴求力が弱かったのか、それとも作品の持つ力そのものが弱かったのか、原因はわかりませんが、ぼくの本、4冊のなかで、これだけが初版のままでした。しかし、ここに、刊行から2年たって、ようやく重版。や、これは、格別。愚息が、他の兄弟より、何年も遅れて、ようやく二足歩行を始めたのを見るような気持ちです。

これもまた、読んでくださったみなさんのおかげです。
ほんとうにありがとうございました。
今後とも、来年も、そりゃまだ早いか、とにかく、これからもご愛読たまわりますよう、よろしくお願い申しあげます。ぽぽん。




| 著書について |
炎の無人島探検記 その5
日本各地に散らばっていた、わがブルーラグーン探検隊の面々は、この日、じつに16年ぶりに、ここ鹿児島のC町に集合したのである。オッサンと変わり果てた姿で。
互いに久闊を叙したあとは、すぐに港へ。
予約していた船はすでに出港準備を整えていた。
大量の荷物を積み込んで、いざ。

空は雲ひとつない秋晴れ。
海は凪。
船は小気味よい音を立てて走っていく。
沖合いに小さく、B島が見える。

近づいてきた。

うは、これは。

うっそうとしたヤシの林。
石がゴロゴロ転がるビーチ。
石造りの朽ちた小屋。
ゴッホの糸杉を思わせるような、妖気あふれる空気。

記憶の泉の、なんという深さよ。底に積もった、木の枝や、泥の中から、ひとつの情景が掘り起こされ、ゆらゆらと浮かび上がってくる。体の奥が、熱い。

と、感傷に浸っている場合ではなく、全員必死の苦力となって、船から大量の荷物をおろした。そして、布施博に似た、すごくいい感じの船頭さんを最敬礼で見送ったあと、前回キャンプした場所へ。

16年前、ぼくたちはヤシ林の中にキャンプした。
石をどけ、地面をならし、見事なキャンプ場を作り上げたのだ。

そこと思しき場所に行ってみると……うおお!
ボボは喜びと懐かしさのあまり、クエックエッ〜、と青田赤道化した。



すごい。
16年前のままだ。
隊員たちの老衰をあざ笑うかのように、この島の時間は完全に止まっていたのだ。

続いて、ボボの目は、あれを探した。
「2またやし」である。二股やしではない。

おさらいしておこう。
これが、16年前に精密な測量で描かれた、宝の地図である。

地図

ボボの目は鉄腕アトムのサーチライトのように光り、目標物を探した。

2またやし〜、どこや〜、2またやし〜、出てこい〜

と、そうして、そして、彼は、驚愕の事実を目にするのである。
島は……








2またやしだらけだった。


つづく!




ジェームズの頭のあたりにも2股やしがある。


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「本気で仕事する24人」にぼくが入っています(笑)。デカイこと言っています。
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