石田ゆうすけのエッセイ蔵

旅作家&エッセイスト、石田ゆうすけのブログです。


※親サイトの『7年半ぶっ通しチャリ世界一周』はパソコンを新しくしたためにストップしたままです。
近況報告や各種案内は、もうしばらく、当ブログにて行います。
人気宿は実際どうだったか?

秋田県乳頭温泉の「鶴の湯」は予約がとりづらい宿だそうで、

ネットは対応しておらず電話予約のみ。

それも毎月1日の朝7時から

半年先の1ヵ月分の予約を受け付けるというシステムで、

その1日の7時に電話が殺到するらしい。

なんかチケットぴあみたいやな、と半笑いしながら、

今年の4月1日の朝7時に電話してみると、

本当にずーーっと話中で、

ようやくつながったのが午前10時過ぎだった。

こりゃ無理か、と思ったら、

意外にも平日ならまだ空きがあるとのこと。

ということで去る10月某日に泊まってきたのだが、

それほどの人気宿、実際どうだったかというと、、、

 

カメムシだらけだった。

 

なにせ僕が泊まった本陣という建物は

約400年前に秋田の殿様おつきの武士たちが

泊まったという茅葺屋根の古い建物で、

虫が入る隙間が、目には見えないがあるのだろう。

カメムシが部屋じゅうを這いまわり、

晩飯のお膳にまで這いあがってくるので、

終始ガムテープでとりながら料理を頂くという状態で、

たぶん50匹は取ったと思う。

僕は平気だったが、

人によっては発狂間違いなしのシチュエーションだった。

こんなことを書くと営業妨害と思われるかもしれないが、

これは宿のほうも最初にアナウンスしておくべき案件だと思う。

怒る客もいる、と従業員のお兄さんから聞いたが、

そりゃ何も知らなかったら普通は怒る(笑)。

聞けばカメムシは10月から出るらしいので、

秋を避ければ問題ない(たぶん)。

しかし紅葉シーズンの最もいい時期に

カメムシが大量発生するというのも因果な話だ。

秋に行く予定で、虫が苦手な人は

本陣以外の新しい部屋を選んだほうが無難だろう。

(人気の高い本陣がこの時期に予約できたのも、

このカメムシのせいか?と今書きながら思った)

 

でもマイナス要因はそれぐらいで、

あとは文句なし。

掛け値なしに素晴らしかった。

 

(以下の画像、色の加工とかしていませんぜ)

 

 

上の写真の左手にある茅葺屋根の建物が400年前に

武士たちが泊まっていたという本陣。

夜に着いたのでどういうところかわからず、

翌朝起きたらこの世界が広がっていた。

本当にタイムスリップした気分だった。

 

硫黄の香りのする白濁湯。

(この露天風呂は撮影禁止なのでネットから)

足下湧出ってやつで、下からぷくぷくと新鮮な湯が出ている。

 

こちらは内風呂。4種類の源泉が楽しめる。

 

あとまったく期待していなかったのに、

メシがめっちゃ僕好みだった。

本陣は各部屋に囲炉裏があって、そこで食べる。

写真はイワナの塩焼きと山芋だんご汁。

そのほか山菜やキノコと、どれも地味なんだけど、

丁寧に作られていて、

食べながら「ありがたいなあ」

としみじみ幸福を覚えるような味だった。

これで本陣は2食付税込9,870円。

カメムシ以外にも壁が薄くて隣の音が丸聞こえだったりと

神経質な人には厳しいかもしれないが、

何より”風情”を取りたい人には超オススメ。

建物は古いけど、各部屋にちゃんと洗面所もあり、

ウォシュレットもついている。

武士たちもケツに温水シャワーを浴びていたらしい。

超人気宿にもかかわらず、

スタッフたちの感じもすごくよかった。

 

この宿「鶴の湯」はもう雰囲気だけで

すべてに満点をつけたくなるんだけど、

じつは前日に泊まった奥小安温泉の宿

「よし川」の湯も素晴らしかった。

日本一の泉質と僕が勝手に思っている湯は

わが郷里、南紀白浜のとある共同浴場の湯で、

そこを越える湯を探しながら日本各地を旅している

といった感じなんだけど、

「あ、越えた」

と思った数少ない湯のひとつが、この「よし川」の湯なのだ。

以前取材で入ったその湯が忘れられず、

今回もう一度泊まって入ってみたのだが、

やっぱりスゲーと再確認。

薄いゼリーに包まれるような感覚で、

こんなにやわらかい湯がほかにあっただろうか、

と記憶をたどったが、どこも思いつかなかった。

ま、ラーメンと同じく好み次第だけど、

よかったらお試しあれ。

 

それにしても今月は温泉三昧だった。

黒部、長野、白浜、乳頭と1ヵ月で4回(笑)。

 

おまけ。

10月22〜24日の秋田。 

全山が紅葉している景色ってのは、

西の人間には馴染みがなくて、ただただ感動。

 

駒ヶ岳周辺

 

栗駒山周辺

 

田沢湖

 

 

 

| |
ジャズが聞こえる街

先週の金土は、わが町阿佐ヶ谷がジャズ一色になる

恒例の「阿佐ヶ谷ジャズストリート」でした。

友人が演奏するので出かけたら店は満席!

てか、予約せずにいけると思った自分が大アホ。

仕方なく町を散歩してストリートの演奏を楽しみました。

 

 

この人たち、めっちゃカッコよかった!

「ブルーグラスストンプ」というカントリー・ミュージック

(彼らのはブルーグラスというジャンルらしいが)のバンド。

毎年出ているそうなので、来年は狙っていこう。

 

音楽があふれる街ってのはやっぱいいですね。

 

 

 

 

| 生活 |
安田純平さんのこと

「乳頭温泉の予約困難宿に泊まってきます、

実際どうだったかレポートします」

と前回書いてから、旅行を終え、

バタバタしているうちに日が流れ、

阪神がドラフト一位指名で2連敗し、

人質になっていた安田純平さんが解放された。

乳頭温泉の話はまた書くとして、

安田さんのことをちょっとだけ。

 

助かってよかった。

でも関連ニュースのコメント欄を見ると批判の嵐だ。

自分の信じる”正論”をぶちまけたい人や、

天誅を加えたい人がほんと多いのね、

と感心してしまう。

その批判に反論するのも面倒なのでしないけれど、

こういった形の憎悪が大量に可視化されることに

あらためてうすら寒いものを覚えてしまった。

 

安田さんとは何度か飲みの席で一緒になり、

いろいろ話をしたが、

とても穏やかで感じのいい、爽やかな人だった。

正直いって好人物の印象しかない。

もっとも何度か会っただけの印象なので、

彼の表層部分しか見えていないと思う。

ただコメント欄に

「どうも怪しい」

「どこか胡散臭い」

といった書き込みが散見されたので、

その表層の印象だけでも書いておきたくなった。

彼に会って彼に悪い印象を抱く人は

ほとんどいないんじゃないかと思う。

 

また3年以上も人質だったわりに

顔色がよく健康的に見える、

などという書き込みもいくつか目にしたが、

奥さんのコメントにもあったとおり、

以前の安田さんと比べると、

げっそりと頬がこけてやつれている。

 

それと、

「どうせ本にして金儲けするんだろ、

けしからん」

という論調もあるようだけど、

何が問題なんだ?と思う。

フリーランスも人間で

食べていくためにはお金を稼がなければいけない。

安田さんから積極的に働きかけなくても、

出版社からはオファーがあるはずで、

そのオファーを断る必要なんかまったくない。

安田さんが本来伝えたかったこととは

違う内容になるだろうが、

3年以上にも及ぶ人質体験の記録を通して、

シリア問題にも言及できるだろう。

それに触れてシリア問題、

ひいては国際問題を身近に感じる人が

ひとりでも増えれば結構じゃないか。

 

以上、書き殴りの雑感でした。

 

 

| 社会 |
予約困難な宿

なんかバタバタしていて、

また更新さぼってます…。

で、仕事も終わっていないのに、

今から秋田の乳頭温泉へ。

予約していたから強行軍です。

あの有名な鶴の湯というお宿。

6ヵ月先の予約が毎月1日の朝7時開始、

とのことで、その時間にかけたら

ずっと話し中で、

何度かけてもまったくつながらず、

人気アーティストのチケット予約か、

テレクラかよ、とあきれるばかり。

途中からアホらしくなって、

10分間隔ぐらいでかけたけど、

やはり延々話し中で、

ようやくつながったのが10時を過ぎてから。

10月の紅葉シーズンだから

もう全日全部屋埋まっただろうな、

とダメ元で聞いてみたら、

意外とまだ空いていました。

それも一番人気の「本陣」の部屋が。

 

というわけで、行ってきます。

(移動中に仕事しながら)

並んで食べたラーメンが激ウマだった!

という経験があまりないので、

なんとなく嫌な予感もしますが、

ま、この予約困難宿が実際どんなものだったか

ぶっちゃけレポートしますねー。

 

 

| |
こんなにおもしろい試合は

また遅めの更新だが、

一昨日のサッカーの試合には痺れた。

テレビの前にかじりつきながら、

「こんなにおもしろい試合は

ちょっと記憶にないわ!」

などと興奮気味に記憶をたどってみたら、

あったがな。めちゃ最近。

そう、ベルギー戦。

 

ま、あれは本番だったから

一昨日の試合とは比較できないけれど、

でもそれを差し引いても

一昨日の試合は、おもしろかっただけでなく、

たぶん多くの人が忘れているところで

おおいに称賛に値すると思う。

それは何かというと

相手が南米のチームだったということ。

日本代表は伝統的に南米のチームは苦手で

これまでなかなかフィットしなかったのに

その南米の、しかも強豪を攻撃陣は圧倒したのだ。

日本代表の長い歴史の中で

そんなの初めてじゃないだろうか。

少なくとも僕の知る限りはそう。

(ブラジルを負かした”マイアミの奇跡”でも

圧倒していたのはブラジルだった)

 

いや、森保ジャパン、最高じゃないですか。

とくに中島がいいなぁ。

見ていてほんとおもしろい。

パナマ戦は退屈だったのに

一昨日のウルグアイ戦がエキサイティングだったのは

相手のレベルの差もあるけど、

中島がいるかいないかの差もあったんじゃないかな。

中島が入って躍動することで、

観ている僕らだけじゃなく、

ピッチ上の選手たちも刺激を受けて

水を得た魚のように俄然活気づくように思う。

 

僕はかれこれもう何年も

なぜ中島を代表に呼ばないのか?

なぜ彼はJリーグでレギュラーすらとれないのか?

と疑問に思っていたから、

彼の今の活躍はほんと嬉しいし、

想像どおり、というか正直、

想像よりちょっと上を行っているけど、

しかし、南野がこんなにいいというのは

まったく思いもよらなかった。

ほかに堂安もいいし、

外しまくっていたけど大迫もいい。

あと、なにげに試合中の森保監督の表情もいいんだよなー。

なんかずっと半笑いしてません?

中島と同じように、監督自身も

試合をすごく楽しんでいる感じがするな。

 

とにかくスカッとした!

 

*

中島翔哉が1年で激変した理由。

社長直談判で実現したポルトガル移籍。

この記事、めっちゃいいです。

| スポーツ |
カメラマンになった裸族隊長

以下、上品な人は読まないように。

 

ここにも何度か書いているが、

僕は大学時代にブルーラグーン探検隊

通称ブルラグ隊というのを結成し、

無人島に行っては裸族になり、

ウホウホ踊ったり、相撲をとったり、魚をついたり、

焚火を囲んで全員で自作詩の朗読会をやったり、

ウホウホと島一周探検をしたりと、

ありあまるエネルギーを消費していた。

こういうアホな行動に

ついてきてくれるバカもたくさんいて、

僕が卒業したあともブルラグは続いた。

その4代目隊長の話をしたい。

 

こんな男前がいるのかというぐらいの男前で、

たとえが悪すぎるが、

川崎麻世にちょっと似ている。

昔は東幹久に似ていると思ったが、

最近、川崎麻世を見て「おっ!」と思ってしまった。

女子だけでなく男も見とれるような男前だが、

ブルラグの4代目隊長になるぐらいだから

(勝手に任命された感じだったが)

アホである。

しかもかなり底抜けのアホで、

ひとつだけ例をあげると、

無人島で裸族になったとき、

己の陰毛に草木をたくさん差して、

生け花作品を作ったりしていた。

 

僕はその行為に感動し、

彼にポーズをとらせて何枚も写真を撮った。

それでは飽き足らず、

一眼レフカメラの望遠レンズを彼の股間に向け、

生け花作品のドアップを様々な角度から撮った。

その写真が手元にあるのだが、

なぜ現像&プリントができたのか謎だ。

当時はもちろんフィルムカメラであり、

撮った写真を見るためにはカメラ屋に現像を出すわけだが、

そのテの写真はプリントされないはずである。

草木で隠しているわけではなく、

”本体”はもろに写っているのだ。

やはりアートと解釈されたのだろうか。

 

それから約10年後、

僕が世界一周から帰国した際、

大学の仲間が集まってくれたのだが、

その中に4代目隊長もいた。

彼は大阪でカメラマンをしていると言った。

 

その彼と先日、一緒に仕事をした。

最初に別のカメラマンにお願いしていたのだが、

台風の影響で急遽日程が変わり、

誰かいないかと考えたとき、

4代目隊長のことがふと頭をよぎったのだ。

ロケ地はどちらかといえば大阪に近いし、

カメラマンとしての彼の腕はわからないが、

あの生け花作品を考えるとセンスはあるに違いない。

 

彼と会うのはかれこれ16年ぶりだった。

相変わらず男前だったが、

川崎麻世、もしくは東幹久だったのが

ちょっと太ってブラマヨ吉田っぽくなっていた。

笑いのセンスは相変わらずで、

撮影後は旅館に1泊し、

僕は彼の話に耳を傾けながら

腹を抱えてゲラゲラ笑っていたのだが、

何よりウケたのが、

彼がカメラマンに進んだきっかけの話だった。

学生時代、無人島で彼の股間に

無我夢中で望遠レンズを向けている人を見て、

「ああ、こういう仕事カッコいいな」

と思ったんだそうだ。

 

そんな彼との初仕事は、、、

僕のオールヌード撮影である(笑)。

来月、某誌に掲載予定。

初代隊長と4代目隊長の初コラボ作品、

ということで完全に悪ノリしています。

 

あ、間違えた。

初コラボはあの生け花写真だった。

 

ブルーラグーン探検隊、ありし日の雄姿。

 

| 生活 |
いつもの稲刈り

なんかバタバタしていて、

更新が遅れまくってますが、

先週の連休は恒例の稲刈りへ。

アフリカを一緒に走った

「ドライペニーズ」のひとり

タケシが信州の山奥で半農生活をしていて、

毎年この時期は同窓会を兼ねて稲を刈るのです。

 

僕にとっても1年に1回、土と触れるいい機会です。

今年も田んぼはぐじゅぐじゅで

一部しか機械刈りができず、ほぼすべて手刈り。

 

家の前にはぜかけをして天日で2週間ほど干します。

このはぜかけがいいのか、無農薬がいいのか、

いずれにせよタケシ米は甘くて抜群にうまいです。

 

ところで、まだ樋田特需(笑)は続いていて、

今日は16:30からのテレビにたぶんちょこっと出ます。

実は先週も出てるけど(笑)。

| 生活 |
予言者

昨日、金本は辞任すると思う、と書いたが、

やっぱり予想通りの展開となった。

などと書けばかっこいいが、

じつは昨日のブログをアップしたあと

ちょっとは冷静になって、そうしたら

どのメディアも続投と言っているし、

やっぱり続投するんやないやろか、と思い、

「わー!感情のまま無責任なこと書いてもうた!

どうやってケツをふこう?

言い訳するか、シラを切るか、、、

うん、シラを切ろう」

という方向で固まっていたのだ。

で、さっきNHKで金本退任の速報が流れた瞬間、

「わっはっは! 私を予言者と呼びなさい!」

と得意になった。

 

調子にのったついでに書けば、

数日前、阪神ファンの知り合いに

こんなメールを打っていた。

「スポーツ新聞は続投と書き立てているけど、

センセーショナルに盛り上げるための伏線だと思う」

さて、どうなんでしょうね。

こういうのってほんとに意図的に

やったりするんですかね?

 

ともあれ、金本監督お疲れ様です。

選手批判を封印した2年目と

若手の積極起用は好きでした。

なんか寂しさもあるけど、

これからはユーモアたっぷりの解説を期待しています。

 

さあ、次は誰が指揮官になるのか?

しばらくはワクワクするなあ。

予言者は掛布監督が見たい!

 

| スポーツ |
阪神居酒屋にて

阪神好きの編集長と

東中野にある阪神居酒屋「とら」にて打ち合わせ。

43年続く老舗らしい。

昨日は巨人との最終戦。

 

 

なぜかBOØWYの写真なども飾られたディープな店内。

看板もなければメニューもない。

「適当に」とお願いしたら、

ポテトフライ、唐揚げ、野菜浅漬け、

ソーセージが出てきて、

それらとビール10杯くらいで飲んで

2人で7000円台だった。

そして昨日も見事な負けっぷりで、

”単独”最下位も決定。

今季のタイガースについて語る

という打ち合わせは大いに盛り上がった。

 

いまだメディアは金本続投という論調ばかりで、

この店「とら」の店主も金本続投支持派だったが、

金本は自ら辞任を申し出ると僕は思っている。

3位でCSに残った高橋が辞め、

去年はCSに優勝し、

今季も3位争いを演じたラミちゃんが

「責任を取りたい」

と辞任に言及、

5位の森監督も退任が決まっている。

最下位の監督がどの面さげて指揮をとるというのだ。

 

金本は選手としては好きだったが、

監督の資質には疑問を抱かざるをえない。

去年は抑えていた選手批判を、

今年はまた繰り返し始めた。

采配のセンスも大事だが、

(金本監督にはそのセンスも感じないが)

調子の上がらない選手の力を引き出し、

この人のためにがんばろう、

と選手たちから思ってもらえる人こそ名将ではないか。

掛布監督が見たいなあ。

 

「仕事の話もちょっと」

ということで場所を変え、

ちゃんとした打ち合わせもやった。

ただしその店も怪しさ満点で、

ドングリ酒なるものがあったので

それを飲んだらたしかに木の実の味がした。

やっぱり中央線沿線はいいなあ。

 

| 生活 |
錆びたポルシェ

ポルシェの吉田さんと久しぶりに会った。

14年前に北海道で知り合って以来

交流が続いている。

当時彼はポルシェの屋根にコンテナを積んで

北海道をひとりで旅していた。

車体に《和歌山→北海道》とでかでかと書かれた

ポルシェが美瑛駅かどこかに停まっていて、

なんじゃこりゃ?と眺めていると、

「車に興味あんのか?」

と声をかけられ、振り向いたら

カタギじゃない雰囲気のおじさんがいた。

でもしゃべるととても穏やかな人で、

話し込んでいるうちに旅は道連れとなり、

ポルシェ旅を束の間体験させてもらったのである。

車の中は全面に板が敷かれ、

足をのばして座れるようになっており、

さながら”お座敷カー”だった。

 

今回会うのは3年ぶりか4年ぶりか。

70歳を過ぎたはずだから、

さすがにそろそろ老いたかなと思いつつ

待ち合わせ場所に行ったら、

相変わらず背筋のピンとのびた

ダンディでかっこいい吉田さんが立っていた。

 

会うたびに刺激をくれる人だが、

今回もそうだった。

大船渡からの帰りらしい。

建築作業員だった吉田さんは震災後、

毎年大船渡に通って、現地で約1ヵ月、

ボランティアで建築現場に立っている。

同じ現場に20人ほどの作業員がいるそうだが、

ボランティアで働いているのは吉田さんだけだ。

「和歌山から大船渡までの電車代も

バカにならないじゃないですか」

と僕が言うと、吉田さんは飄々とこう答えるのだ。

「だから和歌山でアルバイトして

足代を貯めてるんやん」

「でも向こうは払うって言ってるんでしょ。

足代ぐらいもらっても…」

「そんなんイヤやわ。やる気なくすわ」

「なんでそこまでできるんですか?」

「さあ。あいつのこともあるんかな」

吉田さんは自閉症の息子さんを

事故で亡くしている。

「世の中の役にたてたらええな、いうんかな」

のんびりした口調でそう言うのだ。

 

吉田さんは一昨年、69歳のときに

大きな事故をやったらしい。

前後の記憶がないため、

状況が思い出せないそうだが、

ポルシェはほぼ廃車になった。

「ほんま残念やったわ。

70歳になったら車体にヤスリをかけて

塗装はがして錆びさせよう思ってたんや。

それで日本一周するつもりやってん」

「なんで錆びさすんですか?」

「映画の『マッドマックス』みたいでカッコええやろ」

「ポルシェのマッドマックス!」

「見たことないやろ。絶対笑われるで」

いたずらを考える子供のような目でうれしそうに話す。

やっぱりカッコイイなあ、と僕は羨望すら覚えてしまう。

 

食欲も相変わらずだった。

昼に「茄子とトマトのスパゲティ」と

「中落ちカルビ膳」を食べる71歳。

 

 

| 生活 |
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