石田ゆうすけのエッセイ蔵

旅作家&エッセイスト、石田ゆうすけのブログです。


※親サイトの『7年半ぶっ通しチャリ世界一周』はパソコンを新しくしたためにストップしたままです。
近況報告や各種案内は、もうしばらく、当ブログにて行います。
水車男久しぶりに現る

じてんしゃ図書館館長の

土居くんがウチに遊びにきてくれた。

ちなみにこういう人だ。

 

自転車で水車を引きながら

日本にある約3千の図書館をすべてまわり、

書籍『百年の愚行』を置いてください、

と直訴しながら走る、

という旅をした変態である。

ちなみに水車は全部手作りである。

 

その水車の羽(?)には

エコに関する本が入っていて、

それを行く先々で貸し出す、

という活動も同時にしていた。

 

え? 何?

わけがわからん!

でも気になる!

という方は当ブログの過去記事をどうぞ。

こちら

 

土居くんは8年近くかけて

出発点である愛知県の岡崎に戻り、

この旅を終えた。

 

 

このときのブログの日付を見ると、

2012年の11月。

土居くんに会うのはそれ以来だから、

げ、4年半ぶりか。

もうそんなに経ったのか。こええ。

 

彼はこれまで何度もウチに来て、

何泊もしているのだが、

ま、いつもこの水車自転車で来ていたわけだ。

 

で、今回4年半ぶりに会う土居くんは

こんな姿で現れた。

 

 

 

もともと趣味は車という男である。

あ、この車は中古ではあるが、

写真奥の『値下げしました』という字は関係ない。

ここは中古車販売所ではなく、

 

単なる駐車場である。

 

乗せてもらった。

うれしがって運転もさせてもらった。

住宅街をゆっくり走っていたら、

小学生の女の子から

「カッコいい〜」

と人生で初めて言われた。

 

土居くんはいまフリーの仕事をしながら、

いろんな計画のためにお金を貯めている。

で、本業とは別に「ひとえや」という

移動式のゲリラ団子屋を

フェスなどで出店している。

この団子屋がじつに彼らしい。

こんな店である。

もちろんこの店も

ぜんぶ手作りである。

 

 

 

かやぶきの屋根だけで500圓△襪修Δ澄

これらをピックアップトラックにのせて

現地に運び、1日かけて建てるのだとか。

日本文化のすばらしさを伝えたい、

という一心でここまでやっているようである。

団子も、米、きな粉の大豆、水、等々、

すべての素材を厳選し、

とてつもない手間をかけて作っているそうな。

本人曰く、日本中の団子を食べたけど、

どこよりもうまいらしい。

 

営業許可証の関係から、

愛知県内だけでしか出店していないそうだけど、

6月の頭に静岡でも出店するかも、とのこと。

詳細は彼のフェイスブックで→こちら

 

そのほかいろいろ書きたいこともあるけど、

この団子屋の写真のインパクトの前には

すべて霞みそうなのでよそう。

いまは日常の足として車を使っているけど、

ゆくゆくは馬にする予定だとか。

4年半たって彼の生活は当然変わったけど、

やっぱり土居くんは土居くんでした。

 

 

| 生活 |
じてんしゃ図書館ゴール!

やってきました、
「じてんしゃ図書館」のゴールセレモニー。
7年10か月の旅の最終地、
岡崎中央図書館(愛知県)に
集まった人は…はて?
何人だっただろう?
数えなかったので
ハッキリした数はわからないのだけど、
野次馬らしき人も入れると、
30人ぐらいだったかな。
僕ら以外にも東京、長野、静岡、大阪、和歌山と、
多くの人が遠方から駆けつけてくれ、
みんなでゴールテープを持って、
水車つき自転車を待ったのである。

ゴール会場には、道が3方向からのびていた。
「どっちから来るんだろう?」
「あっちかな?」
「いや、あっちだな」
「土居くん、どこかに隠れているのかな?」
…なんだなんだ、この楽しさは?
ドキドキして、ワクワクして、
体が自然と上下に揺れてしまう。
そうこうしているうちに、
やがて約束の午後4時になった。
でも土居くんの姿はまだ見えない。
「自己演出してるなあ」
「寒いから早く来てくれ」
じりじりして、
思わず笑ってしまいそうな高揚感。
しかし。
うーむ。
まだ来ない。
時計を見る。
2分経過。
ええ? 
1分ってこんなに長かったの?
急に懐かしい気分に包まれた。
これは・・・
小学生のころに感じていた1分と同じぐらいだ・・・。

5分経過。
「…もういいぞ、土居くん」
「飽きてきたなあ」
僕の横にいる子供もそわそわし始めた。
あわわ。君たちゴールテープを切っちゃダメだぞ。
ゆうべ虎キチKと夜なべしてつくったゴールテープなのだ。
環境問題に取り組んでいる土居くんである。
新しい紙テープを買って迎えるわけにはいかず、
不要な広告チラシを切って、のりでつなげたものなのだ。
作っているときは「のっぽさん」になった気分で楽しかったのだが、
できあがったものは想像以上に弱く、
ゴール会場で広げている最中に
すでに一度ちぎれていたのである。
端のほうだったからよかったものの、
土居くんがゴールする前に
子供たちがテープを引っかけて
真ん中からちぎれてしまったら目も当てられない。
土居くん、早く来てくれ!
そして10分経過。
「土居くん、演出はもういいぞー!」
と、そこへ、

「あっ!」
「来た!」
「うわ、でけえ!」

人の背よりも高い木造の手作り水車型図書館。
それを自転車で引っ張る着物姿の男。
こんなヤツは世界のどこを探してもひとりしかいない。
そしてこの先、人の歴史が何千年続こうが、
おそらく、二度と出てくることはないと思われる。
そう考えてみると、なんと稀有な個性だろう。

土居くんは、ゴールに集まった人々を見て、
少し驚いた表情を見せたあと、
何か恐縮したような、
またどんな顔をしたらいいのか
わからないような戸惑った面持ちで、
近づいてきた。
そして、僕の汚い字で書かれたメッセージ
《日本全国全図書館訪問ご苦労さま!》
が貼り付けられた、
ばかに太いゴールテープを、
横断幕か何かと勘違いしたのだろう。
その手前で自転車をとめた(笑)。
「こら、テープを切らんかい!」
「あ、は、はい」
ということで、めでたくブチッ。
巨大なクラッカーがポン!
花束が渡され、拍手拍手拍手!




それからは「じてんしゃ図書館」試乗会。
といっても僕が勝手に始めたのだが、
乗ってみて驚いた。
(前にも乗ったような気がするが、忘れていた)
重いってもんじゃない。
急坂の途中から発進するような感じだ。
しかしそれよりも、
水車の右側からのびている棒が邪魔でしかたがない。
走行中、水車が倒れないように
手で支えるための棒らしいのだが、
右に曲がろうとハンドルを切ると、
その棒が体にぶつかってきて、
下手をすると投げ出されそうになるのだ。
よくもこんなもので7年も旅をしてきたものである。
僕が乗り終わったあとも、ひとりずつ、
乗ったり自転車を押したりしたが、
みんな目を丸くして言葉を失っていた。
見て「大変そう」と思うのと、
実際それに触れ、体で感じるのとでは
霧雨と豪雨ほどの隔たりである。

自転車と荷物と水車型図書館、
ぜんぶあわせて150キロ。
上り坂では自転車と水車の連結部を外し、
それぞれをひとつずつ押して上げていたそうな。

岡崎中央図書館にあいさつに行ったあとは、
「じてんしゃ図書館」最後の貸し出しをした。
みんな水車をカタカタ回して、
好きな“エコ本”をとっていく。
あれ? 土居くんは?
と探すと、いつの間にかしゃがんでいる。
見ると、炭をすっていた。
そして筆を手に取り、本1冊1冊に
「読み終わったら一枚葉っぱを書いて
誰かに渡してください」
というメッセージと、木の絵を描いている。
7年前、北海道で会ったときと、
まったく同じやり方(当時はペンだったが)。
そのメッセージを彼はこれまで、
1600冊の“エコ本”に書き、
貸し出し(配布)してきたのだ。

※エコ本とは、
 環境保全を訴えた本のこと。
 子供にもわかりやすいものを、
 と土居くんがセレクトしている。

 

貸し出しを終えると、
みんなの前で公開インタビューを少しやった。
やり終えた今はどんな気持ち? 
と僕が聞いたときの、土居くんの答えが、
彼の旅のすべてを物語っていると思えた。

「喜びしかないです」

長旅を終えた者の心中を覗くと、
たいていは旅を終える寂しさのほうが勝っている。
僕がそうだったし、
ほかの旅人の話を聞いてもそう。
だから僕は立て続けに、
土居くんにこう聞いたのだ。
「寂しい感情は少しもないの?」
土居くんは即答した。
「まったくありませんね。
やっと“終わりやがったか”という感じです」

旅の半分を終えたころ、
飲みながら彼が言っていた言葉を思い出した。

「こんな旅、したいわけないじゃないですか。
でもやるしかないと思ったからやっているだけです。
自分の子供が熱を出したら
夜中でも病院に走ってドアを叩くでしょ。
それと同じです」

その公開インタビューの途中、
土居くんが
「ゆうすけさんに貸し出したい本があるんです」
とかばんの中から何か取り出した。
見ると・・・カタログギフトだ。
土居くんは小声で言った。
「結婚おめでとうございます」
こらこら、そういう場じゃないだろう、
と慌てつつ照れつつ、
その一方で感心してしまった。
1日300円の極貧生活をしてきたにもかかわらず、
こういう気遣いをする土居くんなのだ。

そのあとは居酒屋で「お疲れさま会」。
16人が参加してくれた。
人力にこだわって、
(環境保全を訴える旅なのに、
エンジンを使うのは本末転倒という考えから)
譲り受けた中古ヨットを1年以上かけて修繕し、
一級船舶の免許もとって、
隠岐の島をはじめ、各島に渡り、
さらには沖縄にまでも渡って、
あげく宮崎沖で嵐に遇って海難事故を起こし、
九死に一生を得、
そのほかここには書けないことまで、
いろいろ話してもらって、
僕たちの個室は爆発せんばかりに笑いの渦。
久しぶりに腹が痛くなるほど笑わせてもらった。
初顔合わせの人が大半の会なのに、
いやにまとまった空気ができあがったのは、
土居くんのゴールを祝う、というただひとつの目的で、
全員が一致していたからだろう。
もっとも、訥々とした、土居くんのとぼけた語りに
みんな魅了されたから、というのもあるだろうけど。

次の土居くんの目標は出版社を作ることだそうな。
もちろん、環境を守るための活動の一環だ。
「休憩せずに進みなよ」
と僕は伝えた。

とはいっても、土居くん。
まずはお疲れ様。
しかし、こんな言葉を言う日が来るとは思わなかったな。
なんにしても、無事でよかった。
ほんとに、お疲れ様。



じてんしゃ図書館HP
土居くんにまつわる当ブログの過去の記事。
(当ブログのほうは下から順に読んでくださいませー)

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じてんしゃ図書館のゴールを祝う会

前にもちょっと書いたけど、
平成の田中正三こと
じてんしゃ図書館の土居くん
7年10か月の旅を終え、
とうとうゴールすることになった。

11月10日(土)。
場所は愛知県の岡崎市立中央図書館だ。
彼の最後の勇姿を見にいこうと思う。
泊まりで。もちろん飲むから(笑)。
ほかにも彼の知り合いが数人、集まる予定。
じゃ、ワイワイやりましょう。

で、みなさん。
よかったら土居くんに会いに来ませんか?
16時にゴールして、最後の図書館訪問を終えたあと、
みんなで記念撮影し、
そのあと東岡崎駅近くの居酒屋に移動して、
盛大にお疲れ様会をしようと考えています。

ま、盛大になるかどうかは何人集まるか次第ですが…。
でもま、逆に多くなりすぎても収拾つかないので、
飲み会のほうは20人ぐらいで閉め切ろうかと思っています。
会費は、ま、4000円ぐらいで。

飲み会参加希望の方は、
名前と参加人数を明記のうえ、
僕にメールください。
yusukeishida@hotmail.com

締め切りは11月5日。

水車型じてんしゃ図書館の走る姿を見る最後のチャンスです。
よかったら、お越しください。
吸い込まれそうなくらい、
きれいな目をしたヤツですよ。



***

ちなみに土居くんはこういう人です。

2004年3月。
書店でたまたま『百年の愚行』という本を手に取った。
環境破壊や戦争などの“愚行”を、
写真とエッセイでつづったその本に衝撃を受けた彼は、
ひとりでも多くの人にこの本を見てもらいたいと考え、
近くの図書館に行って「置いてほしい」と直訴した。
その図書館は土居くんの真摯な思いに打たれ、
(鋭すぎる眼光に気圧され)、
その本を購入してくれた。
1か月後、図書館に行ってみると、
3人がその本を借りていた。

自分は地球に何ができるのか?
『百年の愚行』を読んで以来、
ずっとそれを考えていた土居くんは、
旅に出ることを決意した。
日本全国3千か所すべての図書館に、
『百年の愚行』を置いてもらうよう、
直訴してまわる旅である。

テーマが環境保全ゆえ、
旅の手段は必然的に人力、
つまり自転車になった。

2005年1月。
土居くんは悲壮な思いで、愛知を出発した。
しかし、いざ直訴旅を始めてみると、
まともに話を聞いてくれない図書館も少なくなかった。
もどかしい思いを抱えていたある日、
天啓を受けたかのように彼はひらめいた。
「自分が図書館になればいいんだ!」

こうして土居くんは、
自転車にトレーラーをつけ、
そこに本棚を設置し、
厳選したエコ系の本を置いた。
全図書館の訪問を続けながら、
その道中でエコ本を貸し出す、
「じてんしゃ図書館」の旅が始まったのである。

ただし図書館といっても、
借りた本を返す必要はない。
(そもそも移動し続ける彼に返すのは無理)
読み終わったら、次の人に貸す、というのがルール。
そうしてどんどん広がってくれたらいい、という考えだ。
だから実質、「配布」である。
いきおい彼は頻繁に旅を中断し、
本代を稼ぐために各地でアルバイトをする。
1日300円の生活費で旅をしながら、
1冊1000円前後の本を自腹で購入し、
無料で貸し出し(配布)しているのだ。

これまでに貸し出した本は1500冊以上。
その本にかかった費用は、
1冊1000円として、150万円…。

なぜここまでやれるの?
彼に初めて会って、そう聞いたときだった。
土居くんはまっすぐな瞳と、
静かな口調で、
こう答えたのだ。

「人の心を信じてみようと思ったんです」

自己満足なんかじゃない。
彼は本気で地球を救おうと思っている。
そう思った。



ふぅ。
書いているときりがない(笑)。
まだまだ書きたいことがいっぱいある。
彼は道中、何度も僕の家にやってきて、
そのたびに驚愕ネタをくれた。
いろいろ書いているので、よかったら、
過去のブログも読んでみてください。
彼がなぜ、この旅を8年近くも続けてこれたか、
少しわかるかも、です。
土居くんの話

「土居くん」で検索しただけなので、
彼メインの話じゃないのも、いくつかありますが…。

それと新しい記事から上になっているので、
できたら一番下までスクロールして、
下から順に読んでみてください。

時間がねえ!
って人は、これだけでも読んでみてください。
2007年4月10日の記事「土居くんの言葉」

いま、調べていたら、
なんとウィキペディアに土居くんが出ていた!
めっちゃ詳しい!
誰が書いたんだ!?(笑)
彼の旅の軌跡がよくわかるし、
客観的でとてもいい記事だと思うので、
ぜひ読んでみてください。→こちら

| 生活 |
じてんしゃ図書館がとうとう…!

ふぅ。
やっと仕事が一段落。

ということで、
ブログをちょこっと書きます。
数日前の話なのだけど。

秋田の小学校での講演を終え、
飛行機にのって羽田に着き、
携帯を入れると、
僕の地元で
僕の後援会の会長をしてくれているYくんから
こんなメールが来ていた。

《今じてんしゃ図書館の土居くんと飲んでいます(笑)》

「はあ!?」

この土居くんというのは…
えーと、
説明が長くなるので、
ひと言で言うと、

変態です。

もう少し詳しく言えば、彼は、
環境問題や戦争などを取り上げた
『百年の愚行』という本にショックを受け、
ひとりでも多くの人に読んでもらいたい、
という考えから、
日本全国3000か所の図書館を
全部自転車でまわり、
「『百年の愚行』を置いてくれ」
と直訴する旅に出発、
同時に、自分も図書館になって、
環境問題を扱った本を
道中で貸し出し(配布)してまわっている、
という人。

異様な姿である。
自作の水車を
自転車でけん引しているのだ。
“羽”の1枚1枚に本が入っている。


坂本龍馬か!



ま、そういう旅を、
各地でアルバイトをしながら、
8年近くも続けている、という、
つまり、

変態です。

さらに詳しく知りたい方は、
じてんしゃ図書館のHPか、
過去の僕のブログをどうぞ。

彼とは2005年の夏に、
たまたま北海道で会った。
そしてその旅の内容に絶句し、
雑誌に書かせてもらった。
それ以来の仲だから、もう7年になる。
そのあいだ、何度も家に来てくれた。

その土居くんが
なぜYくんと飲んでいるんだ?
と首をひねりながら
電話でYくんに聞いてみると、
Yくんは仕事で移動中に
たまたまカーラジオから流れてきた
土居くんのインタビューを聴いたそうな。
僕のブログや雑誌の記事で
土居くんのことを知っていたYくんは
慌てて地元のFMラジオ局に車を走らせ、
土居くんと対面したというわけである。

土居くんに代わってもらい、
いろいろ話をした。
そして僕は
「白浜の俺の実家にも泊まっていけ!」
と言った。
土居くんは
「いや、それは、悪いですから…」
とすごく遠慮をしていたが、
「いいから、いいから!」
と僕は強引に話を進めた。

翌日、
父も母も
土居くんの姿にバカ受けしていた。
そして土居くんは土居くんらしく、
とても謙虚に、
非常にウヤウヤしく、
たいそう慎み深い様子で、
我が実家に3泊していった(笑)。

そんな土居くんの旅も、
来月とうとう終わりそうです。
ゴールはもちろん…

最後の図書館(笑)。

厳密に言えば、
彼がまだ訪問していない
図書館の最後の1軒。

出発地の愛知にあるそうです。

仕事の都合がつけば見届けに行きたいなあ。
だってあの水車の勇姿を目にできるのは、
これが最後のチャンスになるだろうから。


| 生活 |
タコとエゾシカと手紙

年末のことですが、「民宿宗谷岬」の美人女将から、今年も(去年か……)海の幸が送られてきました。

ドーン。



でかっ。

ミズダコの足です。

で、これを口でくわえて、エクトプラズムを吐き出す俺、といった写真をとろうとしたのですが、、、



は、入らん……。
なんか無理強いされている図みたいですね。
……え?

で、昨日、このタコを薄切りにして、タコしゃぶパーティを開きました。
来週東京を離れる「じてんしゃ図書館」館長の土居くんを送ろうという主旨で。


世界一の焼き鳥屋で飲む土居くん。先日撮った写真です。

そのほかのメンバーは元隣人のMくんに、現隣人のYくん、リーくん、そして変態タコ野郎のぼくという5人。

タイミングのいいことに、この日の朝、岩手の久慈から「僕的日本一のラーメン」が送られてきたので、鍋の〆にみんなで賞味。いや、マジうめー。


ところで、会うたびに新しい感動をくれる土居くんですが、昨日はこれでした。
彼は全国3000か所の図書館を自転車とヨットでまわり、『百年の愚行』という本を置いてもらうよう直訴しているわけですが、館長や司書が留守だったり、図書館が休みだったりすると、手紙を置くようにしています。
で、その手紙、以前はコピーだったのですが、「これじゃ伝わらない。もっと心をこめなければ」と彼は考え、現在はこれを置いていくそうです。



なんと、墨をすって一字一字筆でしたためた手紙!
1枚書くのに40分かかるそうです。

でも、この毛筆の手紙は効果てきめんだそうで、訪問後、図書館から携帯に連絡が入る回数が劇的に増えたそうな。

僕も読んでみましたが、たしかに、手紙の一字一字がものすごい勢いで胸に迫ってきます。コピーの手紙とは、肉迫のしかたがまるで違います。

現代の潮流からどんどん逆行しているように見える土居くんですが、じつはそうではなく、彼は一歩一歩、物事の核心に近づいているのかもしれないな、とふと思いました。

そんな土居くんも、昨日は日本酒を飲んで早々に酔いつぶれ、そのまま僕の部屋に予期せぬ宿泊(笑)。そして早朝、青い顔で飛び起き、始発で仕事場へと向かいました。エゾシカの毛をたくさん僕の部屋に落として。

彼の旅も残すところあと1年程度だそうです。
これまでに貸し出ししたエコ本は約1500冊(全部自腹で購入)。
そして訪問した図書館の数は約2400。

土居くんの旅が、どうか最後まで無事に終わりますように。


以下、彼が図書館に置いていく手紙の文面です。




『百年の愚行』配架のお願い

私は『百年の愚行』という本を、全国の図書館に置いてもらうようお願いするため、自転車で旅をしている者です。同書は環境破壊や戦争など人類が二十世紀に行った数々の「愚行」を百枚の写真とエッセイでつづり、二十一世紀の地球について考えるのがねらいです。
この本を一人でも多くの人に読んでもらいたいと願い、平成十七年一月、自転車で愛知県の自宅を飛び出し、現在の旅を行っています。
もしよろしければ、この本についてご一考くださり、貴館の蔵書に加えていただければ幸いです。
何卒よろしくお願いいたします。



<配架希望書籍>

書名 『百年の愚行』
ISBN 978-4901818001
出版社 Think the Earthプロジェクト
価格 2520円

※以下、ご参考までに

<この活動を始めたきっかけ>

平成十六年三月、仕事帰りに寄った本屋さんで『百年の愚行』という本に出合いました。環境破壊や戦争など、人類が二十世紀に行なった数々の「愚行」を百枚の写真とエッセイでつづった本です。
「二十一世紀もまた同じ世紀にするのか? 本当に大切なことにまだ気付けないのか?」
そんなメッセージを全身で受けとめ、その日は夕食すら食べられませんでした。
数日後、店にあったその本を三冊買い、二冊を友達に「とにかく読んで」と渡し、一冊は自分の手元に置いて毎日ページをめくりました。僕のまわりの人は、その本を知りませんでした。
近くの図書館に行ってみると、『百年の愚行』は置いていませんでした。司書の方に会って話をすると、彼はこちらの気持ちを受け止めてくださり、図書館で取り寄せてくれました。一箇月後、調べてもらうと、三人の方が借りていました。
これは好機だと思いました。この本を一人でも多くの人に読んでもらうことで、地球上で起こっていることを自分自身の問題と捉える人が増えるんじゃないか。そうすれば少しでもいい方に変わるんじゃないか――。
そして平成十七年一月、自転車で愛知県の自宅を飛び出しました。全国三千箇所の図書館をまわり、その本を置いてもらうよう、お願いする旅を始めたのです。
なお私のこの活動は、いかなる法人、集団に属するものではなく、私ひとりの判断で行っています。
詳細はホームページでもお伝えしています。
ご関心いただけましたら、「じてんしゃ図書館」で検索してみてください。
最後まで読んでくださり、ありがとうございます。

平成〇年〇月〇日
土居一洋
住所〇〇〇〇〇
携帯番号〇〇〇〇〇





| 生活 |
もののけ姫に出てきそうな人

昨日、じてんしゃ図書館の土居くんから電話がありました。
資金ねん出のために、東京の高尾山で茅葺屋根をふくバイトをやっているそうな。
で、本日、阿佐ヶ谷で待ち合わせ。
見た瞬間、爆笑しました。



「和」にこだわっている彼。
普段着は着物です。
というか洋服は持っていないらしいです。
冬バージョンとして、着物の上にエゾシカの毛皮を羽織っていました。手製です。
「そのエゾシカ、自分でとったの?」
「いえ、これは違います。でも屋久島では罠をしかけてシカをとっていました。心臓がうまいです」

で、いつもの「世界一の焼き鳥屋」へ。



入ってきたお客さんが土居くんを見て、帰っていきました(そのあと戻ってきたけど)。
僕は女将さんに「すみません」と謝りました。
「でもこの人、別に危険な人じゃないんです」
「いいんですよ。石田さんの連れてくる人、いつも変わってますから」
「………」

全国にある3000の図書館を自転車でつぶさにまわり、『百年の愚行』という本を置いてもらうよう直訴、さらには自分自身も図書館になって、環境問題の本を貸し出しする、という彼の旅も7年目。ぼくの世界一周とほぼ同じ期間、日本を走り続けていることになります。

土居くんは人力にこだわり、おととしはヨットを手に入れました(長年使われていなかったヨットを譲り受け、自ら修繕)。
船舶免許も取得してトレーニングを積み、自転車&「水車型図書館」をヨットに積んで、去年は沖縄へも渡ったとか。もちろん、小さな島々の図書館もめぐりながら。
潮に流されたり、嵐にもまれたり、タンカーにぶつかりそうになったり。発狂しないように叫び声をあげ続け(すでに発狂していると思われるが)、島影が見えたときは涙がボロボロあふれる、といった旅だったようで、ここにはとても書ききれません。

しかし、やっていることも見た目もかなり常軌を逸している彼ですが、会って話すとじつにまともで、目立ちたいわけでもなんでもなく、「こうあるべき」という自分の考えに、すなおにしたがっているのだとわかります。
エゾシカの毛皮をはおった土居くんを見ながら「あかんわ、笑えてしまって、しばらくまじめな話できんわ」と僕が言うと、土居くんは心底驚いたような顔で、「えーっ? この恰好のことですか? 普通じゃないですか」と言います。テロリストのようにきれいな目で。

ダメだ。
オチが思い浮かびません。眠くて。
ま、こういうとてつもない人間は、むしろ箇条書きがよいかと。

寝ます。
おやすみなさい。
明日から種子島&屋久島です。

あ、そうだ。
途中からドライぺニーズのジュンも合流しました。
「俺もたまには載せろ」
とジュンがうるさいので、載せます。
『行かずに死ねるか!』で友を助けに坂を下っていった男です。
この写真、ちょっとカッコつけてます。



土居くんのことを詳しくお知りになりたい方は→ 当ブログの過去の記事 

彼が全国の図書館に置いてもらうよう直訴している本がこちら→百年の愚行

じてんしゃ図書館HP 

| 生活 |
着物姿で立つ男

指定された、待ち合わせ場所は、新宿駅のすぐ向かい。
人でごった返す、家電量販店「さくらや」の前だ。
そこに行くと、坂本竜馬のように、着物をはおって、泰然と立っている男がいた。
通り行く人々がジロジロ見ている。
じてんしゃ図書館の土居くんだ。
金がなくなったため、出稼ぎで東京に来ているらしい。

会うのは……げっ、2年ぶりだ。早いなあ。
でもあまり変わっていない。
相変わらず、黒豹のようにらんらんと輝く目で、下界を見下ろしている。

全国に3000ある図書館を自転車でまわり、『百年の愚行』という本を置いてもらうよう直訴しながら、自分も「じてんしゃ図書館」となって、エコ本を貸し出す、という変態旅をはじめて、はや5年。
「もうすぐで俺の世界一周より長くなるなあ」
とぼくが笑いながら言ったら、土居くんは目を見開き、ショックを受けたような顔をした。時間の経過をあまり考えていなかったらしい。

この旅のあいだに貸し出した本は1000冊を越えるそうな。
金額にして100万円以上。
ぜんぶ彼が道中アルバイトをして貯めたお金だ。
(そのくせ自分は、オール野宿で、ご飯と缶詰を食べているのだから、現代の田中正三である)
なかなか進まない、と土居くんはぼやく。そりゃそうだろう。ほんとは早く終わりたいのに、と土居くんは思いつめた顔で言う。ほんとかよ。

今年の大半は、鳥取でヨットを作っていたらしい。
正確には、30年前の廃船のようなヨットを修繕していた。
それで隠岐島をめざし、そのあと、そのヨットで沖縄に行くという。
そのために一級船舶のライセンスもとったらしい。
自力で行く、という行為へのこだわりのようだ。
それは、まあ、わからないでもないけれど……。
ほんとに、早く終わる気があるの?

店を4軒まわったあと、ぼくは土居くんに握手しながら、かなり本気で「死ぬなよ」と言って別れた。

旅はあと、九州、沖縄、近畿が残っている。
図書館の数にして6、700か。
来年中には終わる、と土居くんはいっている。
彼の時間の感覚は、やはり壊れているような気がする。





| 生活 |
インパクト抜群の手紙

うれしいことに、新刊の感想をたくさんいただいているが(ありがとうございます!)、昨日は今年いちばん、というぐらいインパクトのある感想が届いた。

これ。














果たし状か! という感じだが、差出名を見るまでもなく、誰からの手紙かわかった。「じてんしゃ図書館」館長の土居くんだ。
水車型の本棚を自分で作り、それを自転車で引っ張って、道中出会う人々に環境系の本を次々に貸し出している(しかも旅先でアルバイトをしながら、本はぜんぶ自腹で買っている)、という変態のなかの変態である。
彼のことはとてもひと言では語れないので、よろしければ過去の記事をごらんください。こちら

彼は「和」の文化を重んじている。本棚を水車型にしたのは、和の美しさや機能性を知ってもらうためらしい。そのために水車の構造を一から勉強し、ホームセンターの裏に野宿しながら、1か月かけて自分の背丈ぐらいの水車を作ったというのだからすごい。というか、まあ変態である。

そんな彼ゆえに、このような「和」の手紙でぼくの本の感想を書いてくれたわけだ。
ぼくはちょっと感動してしまい、正座して背筋をのばし、それを読んだ。そしたら声をあげて笑ってしまった。
出だしが、
「鳴き続ける蝉(セミ)の声に、夏の到来と生命の力強さを感じております」
となっていて(季節感が若干ちがう気もするが)、また中ほどでは、
「本の中で美しい言葉に出会いました。“郷土愛”です」
と“郷土愛”のところを力強く書いたりしていて、このへんは毛筆の字体にじつにふさわしい内容になっているのだが、そのあと、
「っと、しょうもない話になりますが」
とはじまってからは、とてつもなくアホなことを(しかもマジメに)書いているのである。毛筆体のこの大仰な雰囲気の手紙と、その内容のギャップにぼくはたまらず噴き出したのだった。

その土居くんの旅はいまも続いている。
使われていないヨットを譲り受け、それを修復・改造し、それに「じてんしゃ図書館」をのせてこれから隠岐諸島に渡るそうだ。

土居くんよ。
よど号みたいに北朝鮮まで行くんじゃないぞ。

と、ここでキーを打ち終わりそうになったが、違う。そうじゃない。
このようなオチでしめくくるつもりじゃなかったのだった。
土居くんのことを書いているとついついこっちも熱くなってしまう。

えーと、ほんとのオチはこうです。

力のこもった毛筆&巻紙の手紙には感動したのだが、封筒にはこんなハガキがテープで貼り付けられていた。
郵便局からだ。
「定形郵便物の大きさを超えています。料金が40円不足しているので、その分の切手を貼ってお出しください」




こんな土居くんのサイトはこちら。応援よろしく!



| 生活 |
土居くんとアフリカ編トークライブ
今日は気合を入れて書きます!
ブログの究極のサボり技、“お知らせ”です! 2点!

ひとつ目。
『自転車人』という雑誌に「じてんしゃ図書館」の土居くんの記事を書きました。
P63の下段にあります。

ふたつ目。
上野のバー「キナック」で3回目のスライドショー&トークライブをします。今回はアフリカ編。以下。

日程:2月16日(土)&17日(日)
時間:17:00open 18:00start
(ちょこちょこ休憩入れながら飲みながらやります。終了は21:00頃の予定。でも延びる可能性あり。ま、飲みながらですし)
チャージ:¥1500(1ドリンク付)
場所:キナック(JR上野駅の浅草口から徒歩2分。地図はお店ホームページのトップ、右隅の「MAP」をクリック)
予約連絡先:yusuke-kinack@hotmail.co.jp(担当:李&遠藤)

前回同様、2日とも内容は同じです。ご希望の日をご予約ください。
なお、今回はメールでの予約のみとさせて頂きます。お店への電話予約は受け付けておりませんのでご了承ください。


会場では著書やポストカードなどの販売、サイン会もします。トーク後はざっくばらんな飲み会に突入しますので、お時間が許す限りのんびりしていってください。
季節がら、怖い話もご用意しておりますのでお楽しみに。いやあ、でも真剣に怖いからやめようかなあ。





| 講演 |
リアル旅人図鑑に登場!
またまたお知らせですが……。
小学館のアウトドア雑誌、『BE−PAL』に「リアル旅人図鑑」という連載記事を書いています。毎回、ひとりの旅人をインタビューし、ぼくが感じたことを書くというもの。
この連載もおかげさまで1年を超えました。そして今回、16人目の旅人は、とうとう出ました! 「じてんしゃ図書館」館長の土居くん

2年近く前にも同誌で彼を取り上げました。そのときは彼の半生を追い、なぜその活動をするまでに至ったか、といったことを中心に書きました。対して、今回は旅の内容のほうに焦点を当てています。同時に、彼の思いにさらに深く突っ込んで書きました。正直にいうと、書きながら少し涙を流してしまいました(オッサン涙腺ゆるすぎ)。ま、それぐらい気持ちをこめて作ったページというわけで。

ちょっと前に、『めざましテレビ』や『ワイドスクランブル』などのテレビ番組でも土居くんのことが紹介されました。どちらもうまくまとめられ、良心的に伝えているように感じましたが(とくに『めざまし』の学校のロケにはしびれた)、改めて思ったことがあります。テレビというのは、その影響力のわりには伝達量が少ないのだな、と。
どちらも10分前後の放送でしたが、ここまでしか突っ込めなかったんだ、とちょっと残念に思いました。当たり前ですが、同じ10分間だったら、文字のほうがはるかにたくさんのことを伝えられます。
このブログでも彼のことは何度も取り上げていますが、『リアル旅人図鑑』のほうはまた違った雰囲気で書きました。

ぼくは何かを勧めるときは「よかったら」という枕詞をよく使いますが、今回はそれを書きません。土居くんの記事は「ぜひ」読んでください。


| 社会 |
土居くんという男
旅人の中には変わったことをするやつがいる。
ローラースケート○○縦断や、キックボード○○一周など、旅が風変わりであればあるほど、旅人の間で伝説のごとく語られる。ぼくが実際会った中では「バイクを立って運転しながら北海道一周」なんて人がいた。
正直、こういった行為に対して、どこか冷めた目で見てしまう自分がいる。彼らにとって、それが本当にやりたかったことなのだろうか? と。
まぁ、本人が満足していればそれでいいんだけど。

「じてんしゃ図書館」の土居くんはぼくの家に5日居候したあと、昨日旅立っていった。
彼は『百年の愚行』という本を日本の全図書館に置いてもらうようお願いしながら、自身も「図書館」になり、主に環境問題を扱った本を20冊ほど積んで旅をしている。本は、自転車の「トレーラー」に取り付けた手づくりの木製本棚に並べられ、気軽に閲覧できるようになっている。本棚には角度がつけられ、走行中でも本は飛び出さない。

じつは彼に会う前から「じてんしゃ図書館」の噂は聞いていた。そのときは「すごいな」と思いながらも、どこかでうがった見方をしていた。変わったことをやりたいのね、と。

ところが実際彼と会って話をすると、すぐに「こいつは半端じゃない」と感じた。とにかく目の光が違う。見ていると吸い込まれるような力がある。ぼくの部屋の隣に住む映画監督のMくんに土居くんを紹介し、3人で飲んだとき、Mくんは言ったものだ。
「役者かと思いました」

あるとき、土居くんに聞いてみた。
「全部の図書館を訪問するっていうけど、どうやって場所を調べるの?」
彼は3センチぐらいの厚さの紙の束を取り出した。全国3千ヶ所の図書館の住所録だ。友人にパソコンで出してもらったらしい。まわった図書館1館ずつに彼の所感が書かれている。
「検討するとのこと」
「温かい対応」
「取り寄せるとのこと」
「秋田美人ばかり、というわけではなかった」 エトセトラ……。
約1年間、旅をして訪問した数は650館。残りはあと2350館。……めまいがしそうだ。
図書館が休みだったらどうするのか聞いてみた。
「利用客の少なそうな図書館だったら置き手紙をして次の場所に向かうこともあるけど、だいたいは開くまで待ちます」
図書館1館のために、その前で野宿することも珍しくないそうだ。徹底のしかたが半端じゃない。

「自転車日本一周という旅は最初からしようと思っていたの?」
ぼくがそう聞くと、彼は目を大きく開け、信じられない、といった顔で言った。
「とんでもないです! 絶対しません」
『百年の愚行』を多くの人に読んでもらいたい。その目的のために、「手段」として自転車を使っているだけだという。

自転車の車輪の横につけている「サイドバッグ」ふたつと、ハンドルの前につけている「フロントバッグ」は手製だ。帆布を「柿渋」で染め、手で縫った。バッグの下部は牛革で覆い、ベルトも牛革を縫って作った。荷台にひっかけるためのフックまで手製だ。木を切って作った。裁縫自体がほとんど初めてだったので、完成まで3ヶ月かかったそうである。
「大変な旅になるのが分かっていたので、弱気になったら、このバッグを見て初心を思い返そうと思って……」
ひと針ひと針、気持ちを込めて縫ったんです――。彼はやはりまじめな顔でそう言った。

うむむ。
じつはこのあと、笑えるネタに持っていく予定だったんだけど、話がシリアスになりすぎたので、オチは明日にします。
| 生活 |
図書館の館長
いま、ぼくの部屋におもしろい男が居候している。
「じてんしゃ図書館」館長の土居くんだ。

彼とは今年の夏、宗谷岬で取材をしているときにたまたま出会った。
背丈ほどの高さの白樺の木が道の向こうからやってくるのを見て、ぼくは少し混乱した。東京のビルの隙間から富士山が見えたときような違和感があった。

土居くんは自転車の後ろにリヤカー、正確にいえば「トレーラー」をつけている。そこに土を満載した木の箱を置き、白樺を植えている。木のまわりにはハーブやワイルドベリーなども栽培している。
「ワイルドベリーはいくつか実が成ったので食べました。けっこう、うまかったです」
土居くんはまじめな顔でそう話す。

トレーラーの背面には木製の本箱が取り付けられ、本が20冊ほど並んでいる。その上に小さな黒板が立てられ、「じてんしゃ図書館」とある。行く先々で本を貸し出しているらしい。当然浮かんでくる疑問をぶつけてみた。
「返却はどうするの?」
「次の人にまわしてもらいます」
人から人へ、本に旅をさせるらしい。次に当然浮かんでくる疑問をぶつけた。
「本はどうしてるの?」
「本屋さんに行って、自分で買ってます」
ちなみに彼の生活費は1日300円。じてんしゃ図書館の本箱には1000円から2000円以上の本ばかり並んでいる。

2年前、立ち寄った本屋さんで『百年の愚行』という本をたまたま手に取った。20世紀の戦争や環境破壊などを100枚の象徴的な写真でつづったその書に「メシを食べられないほどのショック」を受けた。土居くんは売り場にあった3冊をすべて買い、友だちにまわした。さらに近所の図書館に置いてほしいとお願いした。なかなか聞き入れてもらえなかったが、最終的に『百年の愚行』はその図書館に入った。1ヵ月後に司書に聞いてみると、3人が同書を借りていた。

それから半年後、彼は愛知のアパートを引き払い、旅に出た。日本全国の図書館約3千ヶ所にこの本を置いてもらうようお願いして回るという旅である。
「人の心を信じてみようと思ったんです」
土居くんはぽつりとつぶやく。

図書館での反応は様々だった。
涙を流しながらページを繰り、「必ず取り寄せます」という司書もいたが、相手にされない場合も少なくなかった。自分のやっていることへの思いが揺らぎ、孤独感にさいなまれることもあった。木を植えたのは、「生き物」といっしょに旅をすることで、寂しさをまぎらわせるという意味があったそうだ。
ジレンマを抱えていたあるとき、画期的なアイデアがひらめいた。
「自分が図書館になればいいんだ」
そうすれば読んでほしい本を置ける――。彼はまじめにそう考えたのである。

取材後、ぼくは彼のことを企画書に書き、アウトドア雑誌『BE-PAL』に出しておいた。
1週間前、担当から「来月号でやりましょう」との連絡があり、土居くんの携帯に電話した。しかし携帯はすでに使われていなかった。ある手段を通じて、彼に「コレクトコールで電話して!」と呼びかけた。翌日、彼から電話があった。12月6日、彼は宮城県にいた。
電話取材ではやはり深いところを聞き出すのが難しかった。「明日、もう一度コレクトコールちょうだい」と言って切った。翌日、納得のいく原稿が書けず、頭を抱えているところに彼から電話があった。
「事故ってしまいました」
「!?」
車に後ろから思いっきり追突され、自転車が大破したそうだ。幸い彼には怪我はなかった。新しい自転車を買うために仙台に行ったが、いいのがなかった。
「これから愛知に電車で行って自転車を探そうと思います」
彼がそう言った瞬間、ぼくは電話口に叫んでいた。
「だったら東京で降りて家に泊まっていけ!」

彼は鈍行列車を乗り継ぎ、その夜の1時過ぎにやってきた。翌日の締め切りに間に合わせるため、本人を前にインタビューしながら原稿を書こうと思ったのだが、結局朝の8時まで普通に語り合ってしまった。話がおもしろすぎるのだ。翌日、なんとか納得のいく原稿が書けた。

ということで土居くんは現在、ぼくのアシスタント(お茶いれ)をしながら家に居候し、自転車を探している。今日で5日目だ。このところ更新できなかったのは、じつは彼が原因である(笑)。付き合えば付き合うほど面白い男なのでついつい話し込んでしまう。

昔は荒れまくっていたらしく、車に乗るとモヒカンの頭髪が屋根に刺さるほどだったとか。見ていると吸い込まれそうな、いい目をしている。これほど「目力」のあるやつもいない。そのくせ自分のことを主張するうっとうしさや暑苦しさがまったくない。自分がやりたいからやっている。だから、他人がどう評価しようが関係ない。そう言わんばかりだ。

そんな彼が、来月のBE-PALにカラー2ページでのります。よかったら見てください。
| 生活 |
『地図を破って行ってやれ!』文庫改訂版出ました。
2016年8月発売。幻冬舎刊。650円(+税)。アホな日本紀行です。単行本をすべて書き直しました。感想いただけると嬉しいです→ yusukejitensha@yahoo.co.jp
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